ブックワームのひとりごと

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彼はなぜ金閣寺を燃やしたのか 三島由紀夫『金閣寺』感想

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金閣寺』を読みました。

思えば三島由紀夫は読んだことがなかったなあと思って有名な作品をチョイス。新潮文庫の100冊 2016に入っていたのもあります。

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

 

 あらすじ

吃音だったことがコンプレックスだった「私」は金閣寺の美にあこがれ、金閣寺の住職の弟子として金閣寺のそばに住みます。友人の鶴川や柏木との交流、住職との関係を通して、彼は「金閣を焼かなければならない」と考えます。

狂気を説明されると困ってしまう

この小説を読んで面白いというより困ってしまいました。金閣を焼く、という発想がかなり狂気的なのに、圧倒的な語彙力と描写力で説得力があるように感じてしまいます。

何か犯罪を犯したとき「どうしてそんなことをしたのか」というのは必ず聞かれることなんですが、実際それを説明されても困るものなんだなと痛感しました。狂気は否定されなければならないので、「そんなのありえない」と言えるものであってほしいんですよね。自分が狂気に共感できるなんてことは思いたくないんです。そういう意味で、私は黒バス事件の被告人意見陳述を思い出しました。

bylines.news.yahoo.co.jp

これも読んだときすごい困ってしまいましたね……。今感じている感情と似てます。

面白いとか面白くないとかいう言葉では表現できなけれど、やっぱり文章の力はすごいなってしみじみ感じました。美しいばかりが小説じゃないけれど、闇を感じる小説があってこそ、文章の世界の多様性が保たれるんですよね。

描かれる昭和の日本もよかったです。小説の中で描かれる、自分のいない日本は興味があります。ノンフィクションの中の日本とはまた違った感じです。

まとめ

面白いというか、怖い話なんですが、読んでよかったです。世の中にはまだまだいろんな小説があるんですね……。

文学作品はたまにしか読まないんですが、読むと結構ダメージを食らいます。

潮騒 (新潮文庫)

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春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

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