ブックワームのひとりごと

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インドにおける愛国的団体はなぜ浸透したのか 中島岳志『ヒンドゥー・ナショナリズム』感想

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 積読崩そうとして放置してた本を消化してます。『ヒンドゥーナショナリズム』もその一冊。

ヒンドゥー・ナショナリズム―印パ緊張の背景 (中公新書ラクレ)
 

 書籍概要

ヒンドゥー教を中心としてインドの大国化を望むヒンドゥーナショナリズム。著者は実際にインドの国粋主義団体を取材し、どのような人々が参加しているのか調べます。インドにおけるナショナリズムの勃興や、ナショナリストたちがなぜ増えるのかという問題にも切り込んでいきます。

普通の人たちがナショナリストになる

公的なものへの奉仕はいいことだと思うし、その中に「国家を大切にする」というものがあってもいい。けど公的なもの=自分の国家という図式になってしまうとなかなか怖いですね。自分の国のメンツを保つために他の文化を貶めたり、国家に奉仕することだけが善行のように主張するのはよくないです。

一方で、こういうナショナリスト団体に所属している人たちはごく普通の人たちなんですよね。社会福祉から零れ落ちて居場所のない人、都会に出て自分の民族的アイデンティティを見失った人、暇なのでクラブ感覚でやれることを探している人。そういう人たちの受け皿が国粋主義的な団体にしかないというのは問題です。

私は現状食べるものに困らない生活をしているし、日本も今すぐ戦争することはなさそうなんですが、インドで育って隣国との戦争の危機がが日常的にあったら、似たようなことを考えてしまうかもしれません。

インドは多神教国家で、昔は地域ごとに別々の国で、イギリスに支配されていた時代があるので、同じ多神教で藩という区分けが合ってアメリカに占領されたことのある日本と通じるところがありました。日本のナショナリズムについて調べている人が読んだら興味深いところが多いのではないかと思います。

まとめ

解決は難しい問題なんですが、こういう本を通して「自分はどうなのかな」って問うのはいいことだと思います。

簡単な本ではないけれど面白かったです。

ナショナリズムと宗教―現代インドのヒンドゥー・ナショナリズム運動

ナショナリズムと宗教―現代インドのヒンドゥー・ナショナリズム運動