ブックワームのひとりごと

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クローン技術によって追い込まれていく恋人 唐辺葉介『ドッペルゲンガーの恋人』感想

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ドッペルゲンガーの恋人』を読みました。

はてなブログの記事で見かけて読みたい!となったんですが、ブクマをし忘れてどの記事だったかわからなくなりました。残念。

見つかりました。

nyalra.hatenablog.com

ドッペルゲンガーの恋人 (星海社FICTIONS)

ドッペルゲンガーの恋人 (星海社FICTIONS)

 

 あらすじ

研究者である「僕」は極秘プロジェクトによって病気で死んだ恋人、慧のクローンを作り、記憶のデータを移し替えて蘇らせます。しかし一緒に暮らすうちに、慧は自分のアイデンティティに悩み、精神的に追い詰められていき……。

 

心情描写のリアリティがすごい

クローンで恋人を蘇らせるという設定はベタなのですが、そこから生まれてくるアイデンティティクライシスの描写がすごかったです。

死ぬ前の自分との連続性を信じられず、「自分は慧ではないのではないか」と不安になり、物や恋人に八つ当たりするクローン慧の姿は哀れでした。同時に鬼気迫るものでもあります。おかしくなっていく慧を読むのは心がつらかったです。

クローン技術について専門的な内容は書かれてはいないんですが、実際にクローン技術が確立されたら、こういうことがありそうだと思えます。SFの物語にリアリティを生み出すのは技術的な要素だけではないんですよね。

 

死だけがプライベートなものである

もう一つ、ハッピーエンドと見せかけて皮肉なエンドになるところもよかったです。いくら精神の連続性があっても、死だけは逃れられないプライベートなものである、ということ。

主人公がああなることによって、死の恐怖をあまり感じなくなってしまっているんですが、それはやっぱり周りにとっては異質なんだろうなと思います。そこがとてもSF感があります。

あの後の「彼」が死を迎える瞬間、どういう心境でいるのかを考えるとなかなか闇が深いです。想像の余地を残したいいエンディングだなと思いました。

 

まとめ

初めての作家だったけど面白かったです。また機会があったら他の作品もチェックしてみたいですね。

やっぱりSFは楽しいなと再確認しました。

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