ブックワームのひとりごと

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もしも日本に陪審員制度があったら 『12人の優しい日本人』感想

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この作品が出たときには、裁判員裁判はまだ始まっていなかったんですが、今見てみると、予言みたいに感じてしまいますね。

事実がフィクションに追いついている。

12人の優しい日本人 [レンタル落ち]

 

あらすじ

陪審員制度のあるIF世界の日本。殺人事件に関して12人全員無罪の評決をしますが、一人の男性が「話し合おう」と言い出したことから徐々に有罪を出す人が増えていきます。果たして被告は犯罪を犯したのか……。

 

日本人の議論ベタをよく描いている

この作品の元ネタは『十二人の怒れる男』陪審員による会話劇を描いた名作映画です。

なぜ「日本人」なのだろうと思っていたら、日本人の議論の下手さをまざまざと描いていて納得しました。すぐに他人の意見に賛同する人、言いたいことはあってもうまく言えない人、感情的主張ばかり繰り返す人。「ああ、こういう人いるな」と思えるキャラクターの作り方です。

そんなどこかにいそうな人たちが、何度も立場を変え、徐々に建設的な議論をしていくのが面白かったです。

元ネタの『十二人の怒れる男』は話が一方通行でシンプルなのですが、『12人の優しい日本人』は会話が二転三転します。そこの違いも興味深かったです。

 

最初と最後で違う「優しい」の意味

面白かったのは、作品の最初と最後で「優しい」の意味が違ってきたことです。最初は情に流され、いいかげんな気持ちで無罪を出したことに対する皮肉っぽい「優しさ」なのですが、終盤になってくると、罪について話し合い、理性的に人を裁く「優しさ」になってきます。

「優しく」人を裁くということには二つの意味があるということを会話劇によって自然に示すところはさすがだなと思いました。いや、狙ってやってるのかはわからないんですが。

被告が実際にやったかどうかわからないのは元ネタも同じです。けれど議論を尽くして出した評決と、いいかげんな気持ちで出した評決は全く違うものなんですよね。それが民主主義ってやつなんだろうなあ。

 

まとめ

元ネタともども面白かったです。動きの少ない会話劇は、ストーリーの魅力が重要ですね。

いつか裁判員に選ばれた日は、この作品を思い出すかもしれません。