ブックワームのひとりごと

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自然音から聞こえる神の沈黙 『沈黙 サイレンス』感想


映画『沈黙-サイレンス-』予告

chinmoku.jp

いやもうすごかった。

多分長く上映されないと思うので、少しでも気になる人は映画館に見に行ってください。あの音声も映像も映画館で見たほうが絶対楽しいと思います。

 

あらすじ

棄教したという噂の師、フェレイラを追って日本に密航した神父ロドリゴとガルペ。そこでは過酷なキリシタン弾圧が行われていました。潜伏しながら司祭として活動する二人でしたが、やがてロドリゴ奉行所に捕らえられ、棄教を迫られます。地獄のような世界で神はなぜ沈黙しているのか―。

 

原作を読み込み映像に昇華してくれている

細部は違う部分もありますが、原作のテーマをきっちり映像に変換して深く考えてくれたのだなあ……と思います。

神はなぜ苦難の中の人間に何もしてくれないのか? 自然を崇拝する日本でキリスト教ができることとは? 

日本の文化や考え方を調べていないと描けないようなシーンも多くて、原作だけでなく資料もあたってくれたということがわかります。

それでいて映像でしか描けない美しさ、醜さもあって、素晴らしい実写化でした。ちゃんと原作と自分の解釈を作品として落とし込んでいます。

 

自然音が示す沈黙の世界

印象深かったのは、音楽ではなく自然音が多用されているところ。雨の音、虫の声、波の音などがたくさん使われています。

「ただの虫の声がこんなに美しかったのか」とびっくりしますし、作中の夏から秋の時間の流れが感じられる演出でもありました。

これは音のいい映画館で聞いたほうが絶対感動します。

また、自然音を採用することが「沈黙」というテーマに似合っていたなあと思います。音楽も一種の「表現」「ことば」なので、環境や自然が奏でる音がまさに「神の沈黙」を示している気がしました。

 

窪塚洋介つよい

縁起では、キチジロー役の窪塚洋介がすごかったです。自然すぎてキチジローそのものなのでは……と思ってしまったくらいです。

キチジローの不安定さ、弱さ、そして「迫害のないときに生まれていればちょっと優柔不断なだけだったんだろうな」という平凡さがよく出ていたと思います。

イッセー尾方の井上も好きです。この人も生粋の悪人というわけではないんだろうなというところが出ていました。たぶんキリシタンもそんなに恨んでなくて、ただ政治的戦略として迫害しているんでしょうね……。

どのキャラクターも演技は基本的に泥臭いんですが、その中に混じる清廉な雰囲気にはっとさせられました。

 

まとめ

原作が好きだからお布施感覚で見に行くか!と思って初日に行って大正解でした。本当にこの作品を映画館で見れてよかったです。

テーマがテーマなので気軽におすすめはしにくいです。だけどこのレビューを読んでグッとくる人にはぜひ見てほしいです。

 

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

 

 

余談:もっと『沈黙』を知るために

 ところで『沈黙』に描かれている殉教は歴史的には正しくない部分も多いそうな。

詳しくはこの本に書かれています。

殉教?日本人は何を信仰したか? (光文社新書)

殉教?日本人は何を信仰したか? (光文社新書)

 

 これを読むと、また違った視点から『沈黙』を読むことができると思います。