ブックワームのひとりごと

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人々は狂気をどう見たか セイバイン・ベアリング=グールド『人狼伝説 変身と人喰いの伝説について』感想

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人狼伝説―変身と人食いの迷信について

人狼や吸血鬼について調べてみたくなったので借りてきた本です。

でっかい図書館はいろんな本が置いてあるから楽しい。

 

書籍概要

人間が狼に変身し、人々を襲うという「人狼」。そのルーツには人間から動物への変身にまつわる神話があった。人間の人喰いへの欲望も含めて、人狼伝説の背景を探る一冊。

 

人間の中の狂気をどう説明するか

今日で残忍な連続殺人が起きると、精神鑑定やプロファイリングなど、科学的、論理的思考によって理解しようとします。

けれど人狼が信じられていた時代はそんなものがなかったので、オカルトな発想で説明を付けるしかなかったんだろうな……と思いました。

人狼本人による「変身した」という証言も、精神疾患による妄想だと思うとうなずけます。

連続殺人を「人狼」として認識するには、神話や伝説の中の変身物語があったからこそ、というのがこの本の主張なのでしょう。

殺人と言う結果があって、人狼と言う理由が後からやってくる。そこにポイントがあるのかなと思います。

 

面白いがちょっと散漫

内容はかなり面白いんですが、学術的な本として評価するにはちょっと散漫なところもありました。

特に後半、フランスのド・レ元帥について三章も割いているのはよくわかりません。内容は面白いけれど、この本でこんなにたくさん語る必要があったのだろうかと。

訳者が巻末で指摘している通り、物語的な「ロマンチズム」を重視している本だと感じました。やたらと面白い本はまず内容を疑え、というのが学術的な本を読むときのポイントですからね(往々にして、現実はそんなに面白くない)

人狼にまつわるエピソードの収集にはいいかもしれません。しかしもっと人狼について深く考察したい場合は他の本を当たったほうがいいでしょう。

 

まとめ

面白かったですが、学術的な本としておすすめするかは微妙な内容でした。

人狼にまつわる話を読んでみたいというだけならいいと思います。

 

人狼伝説―変身と人食いの迷信について

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