ブックワームのひとりごと

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特甲少女たちの青春の終わり、新しい人生の始まり 冲方丁『テスタメントシュピーゲル3 下』感想

テスタメントシュピーゲル3 下 (角川スニーカー文庫)

ずっと終わってほしかったのに、終わったら終わったで「やだー終わってほしくない!!」ってなるのが完結巻の常ですね。

 

あらすじ

敵に捕らわれた鳳を助けようとする特甲児童たち。彼女らは、すべての因縁にけりを付け、自分と町の運命を切り開くためにひた走る。そして、彼女らが選び取った未来とは……。

 

さよならで終わる物語

涼月、この作品に涼月がいてくれて、本当によかったです。ヒーローでヒロイン、みんなを救う王子さまで、王子さまに救われるお姫さまでもありました。

「世界とか救いてえ」が「世界とか救えそう」(ネタバレ反転)になったとき、涼月は本当の意味で自分自身を受け入れることができたのだと思いました。

「世界を救いたい」=「世界と等価値になりたい」。世界には救う価値があるし、自分自身にも世界を救うだけの価値がある。この瞬間、世界と涼月は釣り合ったんだなと泣きたくなりました。

もちろん涼月の前にはあざなえる縄のごとく苦難と喜びがやってくるでしょうが、それでも涼月なら大丈夫だと安心できる結末でした。

別れの時は寂しいけれど、MPBとMSSで過ごした女の子たちは、これから一緒に戦った仲間のことを支えに生きていくんでしょうね。それはとても美しいなと思います。

 

かけがえのない「その後」の話

この巻では何よりも「その後」が提示されたのが感慨深かったです。

陽炎には幸せになってほしいけど、ミハイルにロリコンになってほしくないので困る。成人するまでは逃げてほしいです。

次の隊長になった子たちは意外でしたが、よく考えると必然なんですよね。新しい妖精、犬たちの物語が作られていくんでしょう。

お姉さんだけど中身は幼女な鳳も、これをきっかけに内面を成長させていくのでしょうか。

完全なハッピーエンドではないですが、それぞれが新しい人生を踏み出していく姿を見れてよかったです。

物語は終わっても、「その後」は読者の心の中にあるんですよね。

 

補完編求む

ただ一つ残念だったのは、作中で示唆されていた謎が一部回収されずに残ってしまったことですね。

チェロを弾く水無月とか、日本がどうして滅びたのかとか、結局その辺が明かされることがありませんでした。

それは100点の作品を99.9999999点ぐらいにする程度の瑕疵なんですが、明かされるのを楽しみにしていたのでやっぱり見たかったな、と。

だから補完編があったらいいなと思います。でも著者が仕事めちゃくちゃ忙しそうだし、難しいかもしれない……。

 

まとめ

楽しくて、つらくて、優しくて、厳しい物語が終わってしまいました。

確か最初に読んだとき私は19歳でした、涼月たちと一緒に、自分自身の青春もひと段落着いたように思いました。

終わりではあっても、「またどこかで」と言ってお別れしたいです。ありがとうシュピーゲルシリーズ。