借り物。最近闇が深い話を連続して読んでいる気がします。面白いんだけれど心がつらくなってくる……。
あらすじ
大学の写真サークルに所属している主人公は、先輩と恋に落ちる。しかしその先輩は、過去に問題があって……。なんとか彼女とうまくやっていこうとするが、二人の状態は加速度的に悪くなっていく。
「ありそう」と思ってしまうのがつらい
読むのがだいぶつらかったです。生々しいタイプの闇。主人公も読者も、どうすることもできないやりきれなさを味わってしまいます。「ありそう」と思ってしまうのがつらいです。
ヒロイン弥恵はかなり人を振り回してばかりいて、そのくせ毒舌で正直で、登場人物の中でも「嫌い」とはっきり明言する人がいるくらいです。
しかし根底には、彼女の抱える生きづらさがあります。自分なりに努力しているのに周りにはそう見えない。自分なりにあがいているのに、努力の方法が根本的に下手なので彼女は前に進めません。
問題しかないキャラクターなんですけれど、そういうある意味愚直な姿を、好ましいと思ってしまうのもなんとなくわかるんですよね。
本当に嫌な女性だけどどこか共感できてしまう。そのことが苦しかったです。
彼女はいてはいけなかったのか?
二人の恋はある悲劇的な結末を迎えます。後半パートは主人公がそれを思い出しながらうじうじしている話です。
主人公は主人公なりに弥恵の幸せを願っていたのですが、どうにもならなかったという事実がリアルです。
でも彼女自身の問題を、他人がどうこうできるなんて思う方が傲慢なのかもしれません。
悲劇的な話ではあるんですが、どこか優しさを感じる話でもありました。
たぶん、この世界には弥恵みたいな人がたくさんいて、みんなに嫌われています。けれどそういう人たちは「いてはならない」人々ではない、と思います。
弥恵のダメさを描きつつ、それでも過度に責めたりはしないところが優しかったです。
まとめ
だいぶ闇の深い話でしたが、どこか優しさもある物語でした。
でも、心がつらくなるので、精神的に余裕があるときに読むのをおすすめします。