ブックワームのひとりごと

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革命を起こした農場の動物たちがディストピアに陥る ジョージ・オーウェル『動物農場』感想

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動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

読みたいなあと思っていたけれど後回しにしていた本。原文の著作権は切れていたのか……。

「闇のどうぶつの森」のような作品でした。

 

あらすじ

農場主を追い出し、自分たちで農場を運営していくようになった動物たち。しかし農場のトップになったブタたちは、日に日に特権階級としてふるまうようになっていく。他の動物たちはその前になすすべもなく……。

 

高い風刺性と社会への洞察

1984のときも思ったけれど、ジョージ・オーウェルの社会への洞察はすごいです。もちろん誇張され、わかりやすくなってはいるんですが、身分の高い人におもねってしまいがちな人間の業をしっかり描いています。

登場する動物たちはみな善良でまじめなのに、社会を批判することをしません。そのせいで、農場はますます非人道的な社会になっていきます。

ブタはもちろん悪役です。しかし彼らを受け入れのさばらせたのは、周囲の動物たちです。社会に対する批判精神を失う危険性というものを感じました。

この民主主義のご時世、政治家が愚かなのは選んだ国民の責任でもあるということを忘れないようにしたいですね。

 

わかりやすい寓話

加えてよかったのが訳文がシンプルでわかりやすかったことです。古典作品ということでとっつきにくく感じている人も多いけれど、内容が短く、オチや展開もわかりやすいのでさくっと読めます。

「政治的批判を持った小説を読んでみたいけど、どれがいいのかわからない」という人には気軽におすすめできる一冊ですね。

そういうシンプルさを持ちながら、結末はどうしようもなく暗く、絶望感にあふれているところが本当すごいというか意地悪というか……。

これを手に取った人には、軽い気持ちで読んで、さくさく読み終わって、そしてつらい気持ちになってほしいです。

 

まとめ

さくさく読んで「うわあ」という嫌な読後感を得る闇が深い一冊でした。

全体主義ファシズム、昔の社会主義国家に興味がある人には一読の価値があると思います。

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