書籍概要
おどろおどろしく、怖くて、美しい。そんな怪奇小説の18編を、古典的なものから新感覚なものまで、一冊にまとめ翻訳したアンソロジー。
オチないところが恐ろしい
怪奇小説ということで、わかりやすいオチのあるものは少なく、読んだ後に妙な気持ちになるものが多いです。
でもそのわけのわからなさが、また幻想的であり、怖くもあります。ホラー小説だってオチのないもののほうが怖かったりしますからね。
各話感想(抜粋)
収録作品が多いので、好きな作品のみピックアップします。
「墓を愛した少年」フィッツ=ジェイムズ・オブライエン
お墓を溺愛する夢見がちな少年の話。
まず「墓を溺愛する」という発想がすごいし、それが鮮やかに美しいものとして思えるのもすごいです。
短編映画になりそうな小説でした。
「七短剣の聖女」ヴァーノン・リー
女遊びが激しい男が、ある女性を追い求め……。
完全に私怨な気もするけど、女好きのろくでなしがひどい目に遭うだけでポイント高いですね! もっとひどい目に遭ってくれても良かったです!
「ボルドー行の乗合馬車」ハリファックス卿
「ボルドー行きの乗合馬車は何時に出発しますか?」と聞いたばかりに災難に巻き込まれる男性。
世にも奇妙な物語っぽいテイストで、主人公が状況を理解できないまま進んでいくのが面白かったです。
「ターンヘルム」ヒュー・ウォルボール
主人公は「塔に入ってはいけない」と言われる。そこでは何が行われているのか……。
変身ものが好きなので面白かったです。ちょうど調べていたものに関連していたのでタイムリーでした。
「失われた船」W・W・ジェイコブズ
遭難した船から帰ってきた男。彼の帰還に人々は湧くが……。
単純な話なのに面白いです。それは情景がはっきりと思い浮かべられるからかもしれません。
周囲の人はショックだったでしょうね。
まとめ
書店ではあまり見かけない作家ばかりで新鮮でした。世の中にはまだまだいろんな作家がいるんですね。
姉妹編もあるみたいで、機会があればそちらも見てみたいです。