ブックワームのひとりごと

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この作品のキリストには幸せになってほしかった ニコス・カザンザキス『キリスト最後のこころみ』感想

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キリスト最後のこころみ

複数の読書ブログで見かけたので内容が気になっていました。

いや~読んでよかったです。面白かった。

 

あらすじ

マリヤの息子イエスは、周囲の不思議な予兆に悩まされていた。そして天の啓示を受け、仲間を集めて自分の考えを広めていく。彼は十字架にかけられるために、ユダに自分を裏切るように言う。

 

ディズニーで言うと『マレフィセント

オタクの人にわかりやすいように言うと、「聖書の再解釈同人誌、キャラ崩壊あり、解釈違いで多くの人がキレた」という感じです。ディズニーにたとえると『マレフィセント』ですよ。

そんな話だからそりゃ禁書にもなるよなあと思います。

たぶん宗教的動機から書かれた本なんですが、はたから見ていると神様そのものをばかにしているように見えます。

ただ、その独特の視点がめっぽう面白くて、長い小説なのにぐいぐい読んでしまいました。

長いし、ある程度聖書の知識はあったほうがいいので、かなり人は選びます。でもキリスト教を勉強している人は一読の価値があると思います。

 

普通に暮らしてほしかった

映画化のタイトルは『最後の誘惑』になっているように、この作品は十字架にかけられたキリストが誘惑されるシーンがあります。

その美しい誘惑っぷりがたまらなかったです。

私は信仰心が薄くて、あんまりあの世とか来世とか信じてないので、あの誘惑のほうが真実味を感じてしまいます。

地に足を付けて生活することをやめ、十字架にかけられることを選ぶイエスを見て「本当にそれでよかったのか?」という気分になりました。

まえがきによれば、著者はこのラストを宗教的なものとして書いたみたいなんですけれど、私はぜんぜんそう感じなかったので皮肉なものですね。

彼には普通の日常を暮らしてみてほしかったです。

 

まとめ

すごく面白かったです。長かったけれど頑張って読んでよかった。希望も闇も両方感じるエキサイティングな本でした。

プレミアがついているみたいなので、読むときは図書館がおすすめです。

キリスト最後のこころみ

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キリストはふたたび十字架に〈下〉

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