ブックワームのひとりごと

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「演劇はこんなにも面白い!」が伝わってくる青春小説 平田オリザ『幕が上がる』感想

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幕が上がる (講談社文庫)

青春小説のおすすめ記事に上がっていた作品です。

 

あらすじ

地方の高校演劇部にやってきた新任の顧問が、彼女らの意識を変えていく。「大会で勝ち残りたい」という意思が、演劇のクオリティを高める。演出を担当することに主人公

は、『銀河鉄道の夜』を翻案した脚本の結末に悩むが……。

 

「演劇はこんなにも面白い!」が伝わってくる

演劇を作り出す舞台裏というものを知らなかったので、非常に楽しく読めました。ひとつひとつのせりふにこだわり、稽古を重ねるごとに変わっていくストーリー。漫画や小説など、ひとりでやる創作活動とは全く違うやりかたです。

そして素晴らしい部分だけではなくて、登場人物がつまらない演劇はつまらないとコメントするところが生々しかったです。でもその行為によって「どこが悪いのか」と問い、自分たちの演劇に生かしていくことがわかっているので、そんなにいら立つことはなかったです。

意外とつまらない作品って、創作意欲をくれるんですよね。「自分ならこうする」と思えるので……大っぴらに言うと角が立つので言わないんですけれどね。

そして顧問の先生が決断したことは衝撃でした。夢を追うってエゴなんですね……。

 

県大会シーンに震えた

そして震えたのが県大会シーン。演出を担当し、ストーリーに悩み続けていた主人公は、県大会の自身の演劇を見て、「自分が何を書きたかったのか」に気づきます。

創作をやらない人にはぴんとくるかわからないんですけれど、自分が何を書きたいのかわからないときってあるんですよね。そういうとき、自分の作品を見返すと教えてくれることがあります。

そして主人公の気づきが、「なぜ演劇をするのか」という問いの答えにもなっています。この気づきが県大会のシーンにあることによって、ただの青春ものでは終わらない、「演劇小説」になったと思います。

気づいてしまったからこそ、彼女は演劇から離れられなくなってしまったんでしょう。

 

まとめ

すごく面白かったです。また他の作品も読んでみたいですね。お礼課金したい……。

高校演劇を見る目が変わりそうな一冊でした。

幕が上がる (講談社文庫)

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話し言葉の日本語 (新潮文庫)

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