ブックワームのひとりごと

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敵対するふたりの王が協力して国に平和をもたらす 沢村凛『黄金の王 白銀の王』感想

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黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

 

あらすじ

鳳穐(ほうしゅう)と旺廈(おうか)という二つの氏族が王位を争い続けてきた翠(すい)の国。囚われていた旺廈の頭領薫衣(くのえ)は、鳳穐の頭領で現王の穭(ひづち)に協力を持ちかけられる。それは、長い争いを終わらせ、翠の国に平和をもたらすための戦いだった。

 

重いテーマを持ちながらきれいごとにならない

敵対するふたりの人物が共闘を選ぶ、という話だと、ついきれいごとになってしまいそうですが、うまくそれを回避しているなと思います。

穭は手段を選ばないタイプで、暗殺を使ったり権謀術数を使ったり結構えぐいです。一方の薫衣は、忍耐強く正直で、人を引き付ける人望のあるタイプでした。

ふたりの主人公の対比が、うまくかみ合っていて、友情譚、バディものとして面白かったです。

ストーリーとしてはかなり地味で、劇的な展開はないし、スカッとする描写もありません。しかしだからこそ、彼らがこつこつと努力して、翠に平和をもたらしたことが尊く思えます。

 

悲しいけれどある意味ハッピーエンド

翠の国が平和になってそこで終わりかと思いきや、薫衣の下した決断にびっくりしました。

でも読み終わって考えてみると、これが最善のエンドだったように思えます。彼はなすべきことのために耐えつづけ、野望も捨て、親しいものも切り捨てました。だから平和になったら、やりたいようにやるのが一番幸せなんだと、今なら思えます。

彼がいなくなったのはすごく悲しいことですが、いつだって「なすべきことをなせ」という教えに従って生きてきた彼にとっては、ある意味でハッピーエンドだと思います。

それは一般的な人の考える幸せではなかったですが、あの結末を見て、薫衣は確かに「虜囚」ではなく「王」だったと気づかされました。彼は最後まで「王」でした。

 

まとめ

かなり地味な作品なんですが、だからこそ染み入る面白さがありました。

友情ものが好きな人には読んでほしいです。

瞳の中の大河 (角川文庫)

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黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

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