読みたいと思っていたけれどなかなか読めてなかった一冊です。
あらすじ
女性を殴る父親、そしてそれに似てきた息子を描く表題作、釣り好きの曾祖父の死を描いた「第三階層の魚」。二編を収録した一冊。
薄暗い社会の中で生きる男性
「なんとなく嫌な感じ」を書くのが上手いと感じました。「共喰い」におけるうなぎの描写だったり、「第三階層の魚」におけるなくなった日の丸の旗だったり。どこがどうと言い難いけれど、どろっと粘つくような、まとわりつくような描写です。
ただ純文学なだけあって、明確な面白さというのはないので、読む人しだいの部分が大きいなと感じました。
文章自体は、この手の作品としては読み易いほうだと思います。
各話感想
「共喰い」
セックスのときに女性を殴る父。その父に似てきたことを自覚した少年は……。
テーマ自体は好きなんですが、終わり方がしっくりこなかったです。どうしてそこでいい感じに終わるのかいまいちわからなかったですね。
闇の話なら最後まで闇のままでいてほしかった気がします。
「第三階層の魚」
要介護状態の曾祖父。主人公と彼は、会うたびに釣りの話をしており……。
個人的にはこちらのほうが好きですね。人が死ぬ前のじっとりとした薄気味悪さ、それでも世話をする家族の姿が生々しかったです。
内容に起伏のない話だったけれど、これはこれで日常感があって面白かったです。
まとめ
さほど好きというわけではない作品でしたが、「なるほど。こういう書き方もできるのか」と新鮮な気持ちで読めました。
理解しがたい部分は多いのに、これはこれでありと思えました。