吸血鬼の本を読むシリーズ。
あらすじ
赤い目の少女によって吸血鬼になってしまった詩也。転校した先で、背が高いことを買われ演劇部に誘われる。彼は背の高い女の子、綾音のパートナーとなり、『吸血鬼ドラキュラ』のドラキュラ伯爵を演じることに。
話はベタ、だけど組み合わせが面白い
吸血鬼になってしまった男の子が吸血衝動に葛藤し、周囲から距離を置こうとする部分はとてもベタです。よく言えば王道、悪く言えばありきたり。
しかしそれを演劇と組み合わせたところが面白かったです。死にたくても死ねない詩也が、舞台の上で「死」を演じる皮肉。だけど今の段階で、それが詩也の救いになっていくという構図が独特でした。
『吸血鬼ドラキュラ』を翻案した劇のストーリーも面白そうでした。こういう劇中作が面白そうだと、ふたつ小説を読んだようなお得感があります。
ただなんとなく変わったものを組み合わせただけではなく、きちんと両者の良さを理解したうえでミックスしたのがわかりました。
詩也の生々しい吸血衝動
さきほど詩也が吸血衝動を我慢するシーンはベタだと言いましたが、ベタながらも描写にリアリティがあって生々しかったです。
化け物になってしまった自分を嫌悪し、いつも周囲におびえている。そんな心情が違和感なく、かつ共感できるように丁寧に描写されていました。
ヒロインである綾音も、美人で胸が大きくて性格がいい、というスーパー美少女なんですが、文章に魅力を押し付けようとする嫌味なところや強引なところがなかったのがよかったです。自然と「この子かわいいな、詩也が好きになってしまうのも納得だな」と思えるんですよね。
奇をてらったシーンはほとんどありません。そういう描写の丁寧さがこの小説の魅力だと感じました。
まとめ
話は奇をてらったところはありませんが、話のひとつひとつが丁寧に練られていて面白かったです。
続きも読んでいこうと思います。
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