ブックワームのひとりごと

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絶妙なキャラクター設定を平易な文章で書く力がすごい 司馬遼太郎『燃えよ剣 上』感想

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)

本好きあるあるまんがで読んでないのにネタにしてしまったので取り急ぎ読みました。

honkuimusi.hatenablog.com

 

 

あらすじ

田舎に生まれた土方歳三は、その剣の力と人を動かす才能で、幕末の武力集団「新撰組」を設立する。思想もなく主義もなく、あるのはただ「新撰組を大きくしたい」という気持ちだけ。彼は敵対勢力を排除しながら前に進んでいく。

 

クズ野郎なんだけど魅力的

この作品の土方歳三は善人ではなく、時代背景を考慮してもクズ野郎の部類に入ると思います。

貴人を狙って女遊びをし、新撰組を大きくするために敵対するものは排除する。近くにこんな奴がいたら嫌だなあと思いました。

しかしそこが、土方の魅力でした。自分の欲望に正直で自覚的である泥臭さ、そしてやりたいことに忠実な純粋さが善悪を超えて面白いキャラクターです。周りの人も、そこに惹かれたからこそ一緒にいるんでしょうね。

そしてそのような微妙なバランスを持ったキャラクターを、きっちり描きこなすところはすごいと思います。

 

わかりやすい平易な文章

もうひとつ、面白かったのは文章が非常にわかりやすいこと。

江戸時代にしか使われていない言葉が登場するものの、それ以外はかなり簡単な言葉しか使われていません。

さらに、わかりにくい言葉にはさらりと説明が挿入されています。歴史に詳しくない私でも、どんどん読み進めることができました。

難しい題材を選んでいるからと言ってひとりよがりにならず、「わかる」ように書いていました。

著者は、自分の文章がどういう人に読まれ、どう見られているか自覚的な人だったんじゃないかな……と思います。プロの仕事とはこのことですね。

文章を書く人にとっては、学ぶところの多い書き方だと思います。

 

まとめ

土方歳三をクズ野郎と英雄の間の、微妙な存在として書きつつ、文章は非常にわかりやすかったです。

歴史小説はあまり手に取らないジャンルなんですが、学ぶところが多かったので読んでよかったです。

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)

 
燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)