ブックワームのひとりごと

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「役割」を持つ人たちの掌編集 いしいしんじ『雪屋のロッスさん』感想

雪屋のロッスさん (新潮文庫)

 

あらすじ

なぞなぞをするタクシー運転手、巨躯のプロバスケット選手、マッサージ上手な女性。何かの「役割」を持った人をテーマにした掌編集。

 

短い中にも感情の波が生まれる

淡々とした。童話のような語り口です。

読むたびにびっくりしたり少し悲しくなったり、短い中にも感情の波が生まれるところが面白かったです。

悲しい話でもうれしい話でも、文章はどこか冷静なので、その分物語に入り込みやすく感じました。

簡単でわかりやすい文章で書かれているので、子どもが読んでも面白いのではないかと思います。

 

各話感想

話数が多いので気に入ったものだけピックアップ。

 

ボクシング選手のフェリペ・マグヌス

平均台から落ちるとき、つまり試合から負けた瞬間にこそ、いちばん絵になるボクサーだったのです。

(P85)

「負けるときに絵になる」という概念が新鮮だったけど、想像してみると何だかわかる気がします。「美しい負け方」というのはありますよね。

すでにあったのに、気づかなかったものを指摘してくれるのが文章の面白いところです。

 

棟梁の久保田源衛氏

大工さんの大半は宇宙人です。太陽系の外からやってきたふしぎな生命体が、ひとのかたちでこの星に定住し、かんなやげんのうの手さばきを学びとったのが、つまりは大工さん、というわけなのです。

(P148)

この始まり方が最高でした。もちろん中身も面白かったです。

ショートショートが大好きだけれど、こんなに目を引く始まり方するものはそうないですよ。