あらすじ
ノースポール合衆国自治州『キヴィタス』は、5億6千万の人口を収容する人工都市だ。アンドロイド管理局に勤める若きエリート、エルガー・オルトンは、帰り道で登録情報のない“野良アンドロイド”の少年を拾う。ワンと名乗った少年型アンドロイドとエルは不思議な共生生活を始めるが、ワンは記憶を失っていた。彼の過去を探るうち、エルは都市の闇に触れてしまい?
(オレンジ文庫公式サイトより)
キャラクターが魅力的
主人公ふたりには外見ではわからない秘密があり、その秘密がストーリーを動かし……そしてその秘密が、なかなか個性的でよかったです。こういうタイプのキャラクターはとても好きですね。
どこのレーベルでもあまり見られない設定で、いい意味で尖っていました。こういう本を出そうという意気はとても好ましいです。
キャラの性格もよかったです。ワンが悪態をつきつつなんだかんだでかいがいしくエルを世話するのが和むし、エルも天然たらしのような爆弾発言をするのは面白かったです。
訳ありなふたりにはハードな未来が待っていそうだけれど、それでも助け合って生きていけそうな、救いのあるエンドでした。
文章がおかしいのが気になる
気になるのは、ところどころ文章がおかしいことです。
たとえば、グロデスクな改造アンドロイドたちのサーカスを描写した文章がこちら。
改造アンドロイドたちの姿は、さながら邪悪なカタログの博覧会だった。
(P108)
カタログの博覧会……カタログの博覧会って何? 「邪悪なカタログ」や「邪悪な博覧会」ならわかるけどなぜ混ぜようと思った。
と、こういう意図や意味のわからない比喩がたくさん出てきて、話に集中するのに時間がかかりました。
これがデビュー数年経ってる人の文章だと思うとちょっと嫌ですね。
ストーリーは面白いことは確かなので、楽しめる人は楽しめると思います。しかし私はこういう文章にツッコミを入れずにはいられないタイプなので、かなり疲れました。
面白いと思い始めたのは残り1/3くらいになったころでした。そこまで大変でした。
全体としては面白かったけれど、続刊を買うかはわかりません。ライト文芸レーベルでSFが出ること自体はうれしいので、買う可能性もありますね。