ブックワームのひとりごと

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蛇婿入をモチーフにした神話ファンタジー 上橋菜穂子『月の森に、カミよ眠れ』

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月の森に、カミよ眠れ (偕成社文庫)

蛇の話を読むシリーズ。

 

あらすじ

タヤタは月の森に住む蛇ガミ。月の森のカミ封じを許したのは、タヤタとの結婚を間近に控えたムラの巫女だった。「守り人」シリーズの作者による、神と人、自然と文明との関わりあいを描く古代ファンタジー。

偕成社HPより)

 

蛇婿入を元にしたファンタジー

蛇婿入のことを調べていて、その延長線でフィクションの中の蛇について調べているんですが、この作品はドンピシャな内容でしたね。

蛇婿入の原型となった神話をイメージして書かれた作品でした。

鉄針による蛇殺しや、女性が蛇の子を産むことも、物語の中に組み込んで消化していっています。

民族学が好きな人には、ぐっとくる内容なのではないでしょうか。

伝聞口調の中に伝聞口調があるなど、ちょっと構成がわかりにくいところがありましたが、それも読み進めるうちに気にならなくなりました。

 

集落の人たちの葛藤が悲しい

もう一つ、面白かったのが集落の人たちの葛藤です。

古い神をあがめる今までの習慣と、未来を見据えて生きるということの間で葛藤する、村人の気持ちがよく描かれていました。

変わっていく社会、抗いようのない時代の流れの中で、選択した登場人物に対してのまなざしがやさしかったです。

オチは思った通りの方向に動いたけれど、それでもそこに至る過程が丁寧だったので、面白かったです。

切ない終わり方でしたが、少しだけ希望のある、素敵な終わり方でした。たぶんこの終わり方が、一番最善なんだと思います。

 

まとめ

求めていたものドンピシャな内容で、よかったです。

ハードだけれども、切なくて美しい話でした。

月の森に、カミよ眠れ (偕成社文庫)

月の森に、カミよ眠れ (偕成社文庫)