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音楽と学校を描いた青春葛藤ストーリー―佐藤多佳子『第二音楽室』感想

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第二音楽室 (文春文庫)

今日の更新は佐藤多佳子『第二音楽室』です。

 『聖夜』とは同じテーマを使ったシリーズです。内容につながりはありません。

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あらすじ

鼓笛隊で、メインの楽器を落とされ、ピアニカを拭くことになった子どもたち。彼らは第二音楽室を秘密基地のようにして、秘密の集まりをする。

表題作ほか、音楽と学校をテーマにした短編集。

 

いい子なんかじゃない

学校と音楽、そして、そこから生まれる葛藤を描いた短編集です。

表題作の「第二音楽室」を含め、出てくる子どもたちは決していい子たちではありません。しかし、いい子でないからこそ書ける小説だなと思いました。

道徳的かと言われるとそうではないんですが、読むと子どものころの至らなかった自分を思い出して、恥ずかしいような懐かしいような気分になります。

 

そして、音楽シーンが本当にかっこよくて美しい! 知らない曲が多いんですが、それでも物語から曲が聞こえてくるような感覚に陥ります。たくさん音楽を聴き込んで、言葉を厳選しながらかいているのだろうなと思いました。

 

この短編集の中では、「裸樹」が印象的でした。

いじめられた経験を持つ主人公、望は人の顔をうかがうくせがついてしまいました。軽音部でも、強く言えません。

軽音部の仲間の名美はそれを見て、いやな顔をします。

でも彼女がいら立つ気持ちが、正直少しわかるんですよね。名美はわがままで自己中心的なんですが、ばかではないんです。望が実はギターを弾けることを知って、ショックだったし怒りを覚えたのだと思います。

でも、やっぱり名美側にも非はあるので、これから喧嘩したり、仲直りしたりして、距離感を調節していくのだろうなと思いました。

 

幸せなだけ、優しいだけの話ではありません。けれど読み終わったとき、少しだけ前向きになれそうな小説でした。

 

まとめ

薄いので、さくっと読めて面白かったです。音楽が好きなので、音楽をテーマにした作品には手を出してしまうところがありますね。

また、機会があればこの作家の作品を読みたいです。

 

第二音楽室 (文春文庫)

第二音楽室 (文春文庫)

 

 

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