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読み進めるうちに不安になってくる時間SF―法条遥『リライト』感想

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リライト (ハヤカワ文庫JA)

今日の更新は、法条遥『リライト』です。

表紙だけ見ると青春ものみたいですね。微妙に違うんですけど。

 

あらすじ

1992年、未来から来た園田保彦に出会った「私」は、彼を助けるために10年後に飛ぶ。しかし実際の10年後、過去の「私」は現れなかった。少しずつ歪み始める時間の秘密は、彼女が書いた小説にあるようで……。

 

読んでいると不安になってくる

起こったできごとに科学的説明はない、どちらかというとストーリーを楽しむタイプのSFです。

それを物足りないと思うか、読みやすいと思うのかは読んだ人しだいですね。私は後者ですけど。

 

ストーリーそのものは時間軸があやふやで、読んでいるうちに不安になってきます。私自身も「ここ、どこ?」という気分になってきました。

一冊の小説によって、周囲の人がよりどころを失い、混乱する時間の渦に巻き込まれる。ホラーではないんですが、その物語はかなり怖かったです。

徹頭徹尾混乱したまま読み終わりましたが、この読後感は結構好きです。ぜんぜん爽やかじゃないし、頭の上にはてなマークが飛び交っていますが、こういう終わり方もあっていいと思います。

 

『リライト(書き直し)』というタイトルが、この作品全体を表しています。何度も書き直され、矛盾し、無秩序になった物語。そういう意味で、メタフィクションみたいなところもありますね。

作中作と、作中の現実がごっちゃになり、その上で書き直され続けていくおどろおどろしさは初めて目にする感覚でした。

現実を書き直されていくというのはおぞましいですね。

 

まとめ

なかなか尖った作品だと思います。私は結構好きです。

混沌とした時間の渦に飛び込みたいと思ったら読んでください。すっごく不安になります。

リライト (ハヤカワ文庫JA)

リライト (ハヤカワ文庫JA)

 

 

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