ブックワームのひとりごと

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魔術師、看護師、フェンシング 2018年上半期面白かった本14選

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今日の更新は、上半期面白かった本まとめです。

例によって新刊は少ないです。『紙の魔術師』三部作と『キュードー・ライフ』くらいですかね。

 

過去の記事はこちら

2017年上半期に読んだおすすめ本19選

横浜駅SF、家族喰い、天盆。2017年下半期面白かった本21選

 

 

 

 

 『つらかった過去を手放す本』石原加受子 あさ出版

「ああしてほしかった」「なぜあんなひどいことを言ったのか」と過去にされたことを忘れられない人たち。そこから抜け出すには、「自分中心」になることが重要だった。カウンセラーが、トラウマからの脱却を指南するハウツー本。

「無理に許さなくてもいい」という一言にほっとしました。自分自身の感情を見つめ、ネガティブな感情も含めて受け入れるのが重要なのだと感じました。

思い出し怒りをしてしまう人におすすめな一冊です。

つらかった過去を手放す本

つらかった過去を手放す本

 

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 『マルティン・ルター ことばに生きた改革者』徳善義和 岩波新書

16世紀ごろ、宗教改革のきっかけとなり、ルーテル教会の祖となったマルティン・ルター。彼の人生をたどりつつ、その思想に迫る。ルターが大きく変えた、ヨーロッパの宗教観とは……。

内容的には結構難しいですが、その分読みごたえがあります。「教会と神」ではなく「人と神」との関係を重んじようとした彼の考え方は、ヨーロッパの思想の転換期の象徴だったことがわかりました。

マルティン・ルター――ことばに生きた改革者 (岩波新書)

マルティン・ルター――ことばに生きた改革者 (岩波新書)

 

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『聖夜』佐藤多佳子 文春文庫

キリスト教系の学校でオルガンを弾いている一哉。不倫して出て行った母親や、完璧な父親への屈折した思いから、冴えない毎日を送っていた。そんな中、オルガン部に外部からコーチがやってくる。オルガン部は、九月の文化祭でオルガンの発表を行うことになる……。

主人公が割とだめなんですが、嫌いになれない上手い塩梅でどんどん読んでしまいました。

オルガンを弾くシーンが神々しくてかっこいいです。オルガンが弾いてみたくなる本でした。

聖夜 (文春文庫)

聖夜 (文春文庫)

 

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 『紙の魔術師三部作』チャーリー・N・ホームバーグ ハヤカワ文庫

魔術師養成学校を卒業し、いやいやながら人気のない紙の魔術師になったシオニーが、惚れた男、sのために大冒険。素材をモチーフにしたバトルが楽しい恋愛ファンタジー

猪突猛進型の主人公がぐいぐいストーリーを引っ張ってくれるので、飽きるということがありません。

シオニーの恋相手、セイン先生のいい人っぷりも見どころ。

紙の魔術師 (ハヤカワ文庫FT)

紙の魔術師 (ハヤカワ文庫FT)

 

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 『やさしさの精神病理』大平健 岩波新書

席を譲らない「やさしさ」、返事をしない「やさしさ」。現代人のやさしさは、旧世代とは違った様相を見せる。精神科の診断室の中から、今と昔の「やさしさ」の違いについて語る。

私は完全に新時代の「やさしさ」を生きているので、年上の人はこういうことを考えているのだな……としみじみしました。

今と昔、どちらかを下げて書いているのではなく、あくまで観察対象として割り切って書いているところがよかったです。

やさしさの精神病理 (岩波新書)

やさしさの精神病理 (岩波新書)

 

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 『キュードー・ライフ!』末羽瑛 メディアワークス文庫

ひょんなことから那須与一の霊に憑りつかれた良治。彼はひとりきりで弓道部の活動をしていた鹿目梓に一目ぼれし、弓道部に入部する。良治はどんどん弓道の楽しさにのめり込んでいき……。

スポ根なんだけれど、無理やりやっているのではなく、「弓道が好きだから楽しんでやっているんだな!」というさわやかさがありました。

わくわくするような弓道試合のシーンもよかったです。的に命中する瞬間の描写がとてもかっこよかったです。

キュードー・ライフ! (メディアワークス文庫)

キュードー・ライフ! (メディアワークス文庫)

 

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 『パーネ・アモーレ イタリア語通訳奮闘記』田丸公美子 文春文庫

下ネタエロネタ大好きのイタリア語通訳、田丸公美子。彼女が接するイタリア人は、一癖も二癖もある人ばかりで……。通訳という仕事について、イタリアという異文化について語るエッセイ。

ここまでセキララに描いて大丈夫なのかと思いつつ、やっぱり特殊な仕事にまつわるエッセイは面白いと思いました。

異文化の橋渡しをする通訳の苦労も語られていて、考えることが多い大変な職業なのだと思いました。

パーネ・アモーレ―イタリア語通訳奮闘記 (文春文庫)

パーネ・アモーレ―イタリア語通訳奮闘記 (文春文庫)

 

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 『先生と私』佐藤優 幻冬舎文庫

技師と専業主婦の間に生まれた男の子、佐藤優。彼は教育熱心な両親に後押しされ、地元の塾に通い始めた。そこには、個性豊かな教師陣がいた。やがて、経営の方針によって塾の先生が分裂し……。

本題とは関係が無いんですが、教育にお金をつぎ込むことができるのに「裕福ではない」と語るのがジェネレーションギャップを感じました。

塾の先生との出会いから、少しずつ考え方が変わっていくところが面白かったです。

先生と私 (幻冬舎文庫)

先生と私 (幻冬舎文庫)

 

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 『きみの友だち』重松清 新潮文庫

事故で足が不自由になった恵美。彼女は事故にかかわったクラスメイトを責めたことをきっかけに、クラスで孤立してしまう。恵美は同じくクラスで浮いている、由香と仲良くなるが……。ひとりの少女を中心とした連作短編集。

子どものずるいところ、かっこ悪いところも含めて描いているのが面白かったです。ときどき昔を思い出して、イタタタとなりますが。

子どもだったころの至らなさを思い出してしまう作品でした。

きみの友だち (新潮文庫)

きみの友だち (新潮文庫)

 

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 『水族館の板前さん』末羽瑛 メディアワークス文庫

働いていた料亭が閉まり、無職になった主人公、浩介は、水族館の臨時職員として働くことになる。水族館の仕事に少しずつやりがいを見出していく浩介だったが、仕事は波乱の連続で……。

水族館に板前さんが務めるというキャッチ―な話。それでいて、仕事の苦労や、自分自身の「やりたいこと」を問う過程を描いており、お仕事小説として楽しめる作品です。

ワイワイ楽しい雰囲気でありつつ、締めるときはきっちり締めるメリハリのある作品でした。

水族館の板前さん (メディアワークス文庫)

水族館の板前さん (メディアワークス文庫)

 

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 『看護婦が見つめた人間が病むということ』宮子あずさ

看護婦の著者は病棟でいろいろな人に出会う。夫婦関係を見つめなおす人、精神病棟で寄る辺なく生きている人。病をきっかけに暴かれる、人間性を淡々と見つめるエッセイ本。

テレビで見るような「きれいな闘病生活」とは全く違う、苦しく醜い病気のありさまが静かに語られていきます。

病と向き合うのはとても難しいことなのだ、としみじみ思いました。

看護婦が見つめた人間が病むということ (講談社文庫)

看護婦が見つめた人間が病むということ (講談社文庫)

 

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 『先生とそのお布団』石川博品 ガガガ文庫

売れないライトノベル作家、石川布団。人の言葉を理解する猫「先生」とともに、今日もひたすら小説を書く。打ち切り、出版、また打ち切りと、出口の見えない戦いに疲弊していく布団だったが……。

自分をネタにした私小説ライトノベル。脚色は入っているだろうけれど、なかなかプロットが通らない展開はリアルに感じました。

物語を書くものが背負っていく業を感じさせる作品でした。

先生とそのお布団 (ガガガ文庫)

先生とそのお布団 (ガガガ文庫)

 

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 『Let it Bee!』末羽瑛 電撃文庫

内気な少女、有星結恵は顧問の蜂谷巴に誘われ、廃部寸前のフェンシング部に入部。しかし彼女には、先端恐怖症という大きなハンデがあった。団体戦に出場するため、巴とフェンシング部のメンバーたちは結恵をフェンサー(フェンシング選手)に育て上げようとする。

フェンシングにかける青春のさわやかさ、ライバルたちとの戦いの熱さがよかった作品です。

続きがないのが残念ですが、一冊でも読める内容です。

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 『楽園 戦略拠点32098』長谷敏司 スニーカー文庫

 人類の間では、千年間戦争が続いていた。サイボーグ兵ヴァロアは、敵が必死に守っている謎の惑星に降下する。そこでロボット兵ガダルバと少女マリアに出会い、牧歌的な生活をするようになる。しかし、この惑星には秘密が隠されていた……。

センチメンタルなところがいいSF作品。何気ない日常が美しいだけに、その背景にある事実のむなしさが強調されます。

しんみりしたいときにおすすめの作品です。

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 まとめ

この上半期は、面白いと思った作品の数は少なめでしたが、ひとつひとつは楽しめました。

下半期もどんどん読んでいきたいです!