ブックワームのひとりごと

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虫眼鏡のピントが変わっていくような感覚―穂村弘『シンジケート』感想

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シンジケート

今日の更新は穂村弘『シンジケート』です。

短歌を少したしなんでみるシリーズ。

 

書籍概要

エッセイ、俳句、短歌など、マルチに文章を書いている穂村弘。彼の作った短歌をまとめた歌集。

 

 

収録作のバランスがいい

シュールレアリスム調というか、意味のわからない夢のような歌が多いんですけれど、そんな中にときどき具体性の強い歌が混じっているのにどきっとします。虫眼鏡のピントが突然合うような感じになります。そのような収録作のバランスが印象的でした。

夢を見ているようであるけれども、一瞬ふと目覚めてまともになるような、そういう塩梅が好きです。

読んでいて、ふわふわとした不思議な高揚感がありました。

 

あと、結構下ネタ多くて笑ってしまいました。こういうどこかユーモラスな下ネタは好きです。

真面目に読んでいるときに、さらっと下ネタが出てくるとちょっとずっこけますよね。

そこにある種の反骨精神や、読者をからかうような感じを持ちました。ずっと真面目なだけではないという、突き放したところがあります。

 

以下、好きな歌をピックアップ。

抱き寄せる腕に背きて月光の中に丸まる水銀のごと(P18)

他人の優しさを拒んでしまったのかなあと思います。水銀のように床にべたーっと丸まっている情景が思い浮かびます。

疲れているときに読んだので、いろいろ心当たりがある作品でした。

 

バラの棘折りつつ告げる偽りの時刻信じて眠り続けろ(P25)

意地悪さを感じるけれど、なんとなく「偽りの時刻」を告げる人のことが好きな気がします。

眠っているところを傍で見ているから、当然といえば当然ですが。

 

終バスにふたりは眠る紫の<降りますランプ>に取り囲まれて(P82)

いつかは忘れたけど、この歌はどこかで見たことがあります。

ほとんど乗客のいない終バスに肩を寄せ合って眠るふたりの乗客、さびしさとロマンチックさを感じます。

 

まとめ

どこをどう面白いのか説明するのが難しいんですが、その「よくわからなさ」も含めて面白かったです。

 幻想と現実の間を歩いているような感覚になりました。ふわふわした気持ちで読み終えた作品です。

シンジケート

シンジケート

 

 

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