ブックワームのひとりごと

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並行世界におけるすべての彼女を愛せるか―乙野四方字『僕が愛したすべての君へ』感想

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僕が愛したすべての君へ (ハヤカワ文庫 JA オ 12-1)

今日の更新は、乙野四方字『僕が愛したすべての君へ』です。

一度読んでみたかった作品。

 

あらすじ

並行世界の概念が証明されている世界。秀才の高崎暦(たかさき・こよみ)は85番目の世界から来たクラスメイト滝沢和音(たきざわ・かずね)に声をかけられる。彼女と親密になる暦だったが……。

 

並行世界が実証された世界のラブストーリー

「常に並行世界の自分と入れ替わる可能性がある」という発想が面白かったです。並行世界は今いる世界を0として、1、2と数が大きくなるほど遠くなっていきます。1、2くらいの並行世界移動は、ほぼ変化がありませんが、10、15になってくると大きな変化が出始めます。

終盤ではこの並行世界を移動する機械がカギを握ることになります。

 

描写としては、主人公の、「ムカつく秀才」っぷりがよかったです。こういう才能があるキャラって、現実離れしていることも多いんですけれど、「どこかにいそうな」キャラクターなんですよね。

和音もかわいかったです。回りくどい告白をしたり、ちょっと素直になれなかったり。幸せになってほしいカップルでした。

彼らは並行世界の自分と入れ替わったとき、はたしてそれが自分自身なのか悩むことになります。1、2の入れ替わりは記憶もほぼ同じ経験もほぼ同じですが、それでも素直に「彼女」だとは認識できません。

それでも主人公の暦は「彼女の可能性」を愛すると言って結婚していきます。その結論がSFらしくて好きでした。

 

ただ、この一冊だけだとちょっと物足りない気もします。結構さらっと終わってしまうので。劇的な展開も少しだけだし。

対になっている作品なので、きちんとした評価はもう一方の本を読んでからかな。

「ここ、伏線かな?」という部分がところどころにあるので、『君を愛したひとりの僕へ』でどうやって回収されるのか楽しみです。

 

まとめ

 ちょっと物足りないけれど、全体の評価はもう一方の本を読んでからですね。

設定やキャラクターは好きなので、『君を愛した~』も楽しみです。