ブックワームのひとりごと

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面白いけど内向きなところはいただけない―牧野修『月世界小説』(ハヤカワ文庫)

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月世界小説 (ハヤカワ文庫JA)

今日の更新は、牧野修『月世界小説』です。

この装丁がかっこよくて気になっていた本。

 

あらすじ

友人とゲイパレードを見に来ていた菱谷修介は、突然怪物たちに襲われ、世界の終わりを見る。彼が逃げ込んだのは自分の妄想世界。あまたの妄想世界では、神と人間の言語をめぐる戦いが続いていた。

 

内向きの話はどうかと思う

視点がくるくる変わり、主人公が複数の世界線にまたがるので混乱しそうになりました。が、その混乱を含めて面白かったです。

言葉が世界を作り、また崩壊もさせる壮大な話でありながら、その原因が「妄想」だというのがギャップがありました。

シュールギャグかな? という部分と、とてもシリアスな部分があって、どう受け止めていいかわからないうちに話が終わってしまいました。いい話だった、のかな? とぼうぜんとしました。

でもこういう読者を置いてきぼりにする姿勢は嫌いではないです。

 

一方で、「妄想世界による並行世界」っていうテーマ上しかたがないけど、話がすごく内向きなんですよね。そこがあまり好みじゃなかったです。

話が民族主義、言語主義的に過ぎるし、外国籍でも日本語を母語とする人はいるのにそれはどうなんだっていう視点がない。

あまりに「日本人が日本語を話す」ということを前提にしすぎています。

SFなのにそこ疑わないの? というびっくりしました。

主人公が(ある世界線では)言語学者という設定なのに、その可能性について思い至らないのは変だと思います。

 

恋愛描写も過程の描写がまったくないので「あ、そうなの……」で終わってしまいました。結果にもそんなに興味がなかったのでなんだか虚無でした。

同性愛とか異性愛とかそういう問題じゃないと思います。

 

まとめ

面白くはあったんですが、内向きなところはいかがなものかと思いました。

同性愛描写もそうですが、 全体的にちょっと発想が古いところがあると思います。

月世界小説 (ハヤカワ文庫JA)

月世界小説 (ハヤカワ文庫JA)

 
屍の王 (角川ホラー文庫)

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