今日の更新は、森見登美彦『夜行』です。
あらすじ
京都で学生時代を過ごした六人が、鞍馬に集った。話題の中心は失踪した「長谷川さん」。やがて六人は、旅にまつわる不思議な体験を話し出す。それには「夜行」という絵がかかわっていた。
すごく不条理で、夢の中のような雰囲気でした。そして怖い。
怖いといってもグロデスクなシーンがあるわけでもなく、おどろおどろしい感じでもないです。ただ理屈では説明できない展開があるだけです。「説明できない」というだけで、こんな怖い話が書けるんだなと思いました。
実際こんな状況に置かれたらおかしくなりそうだな、というエピソードばかりで、しかも話ごとのオチもすっきりしないのでとても不安になります。読んでいるだけでぞわぞわしました。
はっきりわかりやすい展開ではないので、しっかりストーリー性を楽しみたい人には向かなさそうですが、私は好きです。
わからないことを楽しむタイプの作品ですね。
そしてラストのオチも、狐につままれたような感じでよかったです。ええ……! と驚いたあとに、じんわり怖さが戻ってくる感じでした。集まりがお開きになるだけで終わりかと思っていたんですが、いい意味で裏切られました。
キーパーソンである「夜行」の絵を描いた画家岸田が語る「世界は常に夜なんだよ」というせりふ。その言葉通り、一寸先は闇、不思議な世界がすぐそこに隣り合っている作品でした。
まったく事前情報を入手せず、「前にCMでやってたなあ」というだけで手に取ったのですが、それが正解でした。とても新鮮な気持ちで読めました。
そのCMはこれです。
まとめ
面白かったです。CMをやってなかったら読まなかっただろうので、広告って大事なんだな、と思いました。
気が向いたら他の作品も読んでみたいです。
過去の森見登美彦関連の記事はこちら。
『有頂天家族』の感想記事です。