ブックワームのひとりごと

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青春というファンタジー空想空間―古谷兎丸・乙一『少年少女漂流記』

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少年少女漂流記 (集英社文庫)

今日の更新は、古谷兎丸・乙一『少年少女漂流記』です。

 

あらすじ

孤立、親との関係、ダイエット。悩みを抱える少年少女たち。彼らの心はファンタジックな風景を生み出す。小説家の乙一と漫画家の古谷兎丸の合作である連作青春短編。

 

 

非現実的な描写が青春に合っている

空想のファンタジーっぷりがすごい。夢の中のように非現実的で、それゆえに壮大。それが思春期の不安定な心によく合っていました。

あの時代の情緒不安定、自意識過剰っぷりにはファンタジーがよく似合いますよね。

 

個人的に好きだったのは『お菓子帝国』ダイエットを成功させた少女が、いたずらで口に甘いものを突っ込まれたことから「お菓子が宇宙人であること」に気付き、その侵略から世界を守るためお菓子を食べ続ける話です。

シュールなのにさわやか。この連作短編では珍しく完全に前向きな話です。それだけに清涼剤でした。

 

それから『学校の中枢』も好きです。かつての親友のクラスルームへ、ろうかの黒いところだけを踏んで歩いていく話。

主人公の自意識過剰っぷりがリアルすぎて笑いました。

「あぁ 追いつけない

黒いタイルしか踏めない僕が根本的に不利だ!」

(しまった! 今のは圧倒的と言うべきだった

恥ずかしい

だから僕は六組なんだ)

(P96)

そんなこと誰も聞いてないし気にしないからな!?

でもそんなくだらないことで恥ずかしくなってしまうのはちょっとわかります。

 

わりとストーリーは単純なんですが、「あるよねこういうこと」というシーンが多い作品集でした。

昔を痛みと共に思い出しました。

 

まとめ

ちょっと昔が懐かしくなる作品でした。

でもあんまり戻りたくはないですけどね!

少年少女漂流記 (集英社文庫)

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