全巻読破したので、感想のまとめ記事です。
あらすじ・書籍概要
魔術師の弟子ナサニエルは、今をときめく魔術師ラブレースに侮辱されたことをきっかけに復讐を企てる。呼び出されたのはジン、バーティミアス。バーティミアスはいやいやながらも生意気な少年の復讐に付き合うことになるが……。
総評
子どものころ読んだきりだったんですが、読み返してもめちゃくちゃ面白かったです。
妖霊たちが変身しながら戦う迫力たっぷりのバトル、ナサニエルとバーティミアスの奇妙な主従関係、異世界とこの世界との関係。
そしてこのシリーズの特徴的な部分が、バーティミアスの視点のとき語られる注釈。バーティミアス視点のときは文章が二段組になっており、下の狭い段に注釈が入っています。注釈は何気ない情報が多いんですが、さらっと伏線が入っていることもありなんだかんだでしっかり読んでしまいます。本筋とは関係ない注釈でも、バーティミアスの独特のユーモアが込められていて笑えます。
人間で視点を持つのはふたりで、魔術師のナサニエルとレジスタンス団のキティ。聡明だけれど生意気なクソガキ、でもたまーに良心を見せるナサニエルに、バーティミアスは興味を持ちます。しかしナサニエルは、長じるにつれて良心を失っていきます。そこに現れるのがキティ。彼女は魔法への抵抗力を持っています。それを生かして魔術師の世界に反旗を翻そうとします。
少年の時の心を忘れ、ろくでなしになりつつあるナサニエルと、正義感が強く頑固なキティ。ふたりの対比が印象的でした。
そして彼らが同じ目的を持った最終巻はとても熱かった!
終わり方は子どものころは不満に思っていましたが、読み返してみるとこれでよかったんだと思いました。ふたりの主従関係はここでエンドマークがついた。それでこそナサニエルとバーティミアスは「自由」になれたんだと思います。
最後は強いられるのではなく自分で選んだ関係になったんですね。
大人が読んでもめちゃくちゃ面白いのでおすすめです。ぜひ読んでくれよな。
感想一覧
性格の悪い少年が妖霊を召喚して秘宝を盗む―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス サマルカンドの秘宝 上』
かっこいい危機と自業自得な危機と―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス サマルカンドの秘宝 中』
人間を助けてしまうバーティミアスが愛しい―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス サマルカンドの秘宝 下』
ふたたび呼びだされたバーティミアス―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス ゴーレムの目 上』
魔術都市プラハとグラッドストーンの墓泥棒―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス ゴーレムの目 中』
本物の嫌な奴になった主人公ナサニエル―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス ゴーレムの目 下』
疲れた妖霊、いやいや魔術師に従う―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス プトレマイオスの門 上』
自分がクズだと気づいた魔術師マンドレイク―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス プトレマイオスの門 中』
名前を取り戻した少年がロンドンを救う―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス プトレマイオスの門 下』