今日の更新は、三上延『ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~』です。
あらすじ
『晩年』をめぐり取引に現れた吉原という男。彼は八百万というふっかけた値段で本を売ろうとする。栞子の妹、文香の受験も重なり、ビブリア古書堂はお金に悩まされることになる。一方で、栞子は母方の祖母の夫、水城からシェイクスピアにまつわる依頼を受ける。
忠誠を誓う悲しい道化
吉原のキャラクターは好きですね。ある意味この作品一番のヤンデレともいえるキャラクターではないでしょうか。
問題のある古書店主だった栞子の祖父久我山尚大に忠誠を誓い、自ら知恵比べを再現しようとする。しかし、久我山が後継者に指名しようとしたのは彼ではなかった。
その屈折した愛憎は、さらりと描かれてはいますが、まじめに考えるとかなり恐ろしいですね。
でもこういう「おいしい」愛憎も、さらっと書き終えてしまうのがこのシリーズの良さでもあります。あとは読者の創造に任せてくれるところが、信頼してもらっている感じがしました。
謎と言うと智恵子の言動も謎のままで、彼女がはたして栞子を愛しているのかどうかもよくわからないまま終わってしまいました。
栞子と勝負しようとしたのも、彼女に勝たせてやりたかったようにも見えるし、隙あらば本を奪い取ってしまおうと思っていたようにも見えます。
でもこの辺は、智恵子自身がはっきりさせたくないんでしょうね。あいまいなままにしておきたい。そこが子どもたちに苦労を掛ける原因なんですけれどね。
文香と栞子ははっきり智恵子を憎むことも愛することもできないので、すごく大変そうです。たちの悪い母親でちょっとかわいそうになりました。
でも、五浦という新しい家族を得る栞子は、母親の影をあまり気にせずに生きて行けそうです。末永くお幸せに。
まとめ
かなり人間関係の地獄が煮詰められた最終巻でしたが、とても面白かったです。
続編も気が向いたら読みたいですね。
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