今日の更新は、小野不由美『東の海神 西の滄海』再読感想です。
青春時代にハマった作品を久しぶりに読みたくなりました。
あらすじ
延麒六太が、胎果小松尚隆を延王に選んで20年。荒廃した国は生気を取り戻しつつあった。そんな折、尚隆の治世に不満を持つものが六太をさらう。六太はかつての妖魔をつれた少年、更夜と再会するが……。
国がほしい男と国を背負った麒麟と
延王は、しょっちゅう城を抜け出して市井の人々と交流し、朝議をさぼっては官吏たちに叱られる生活を送っています。
しかし、尚隆は好き勝手に生きているように見えるけれど、その実「王ではない自分」が一切存在していない男です。
瀬戸内の海軍の跡取り息子に生まれ、若、若と呼ばれているうちに、彼の中で国を守る自分という自意識が生まれます。その強烈と言っていい自意識は、国がほしい、という欲求につながります。
ここまで「王であること」に自分をささげられる人間がいますか? 尚隆のそういうところが好きです。
戦乱の日本で生まれ育ち、蓬莱での親に捨てられた六太が「国に王はいらないのではないか」と思い、王を選んでしまった自分に対して葛藤するという心理描写が、つらかったです。
麒麟が王を選ぶというシステム自体はいいとして、その麒麟に人間並みの思考力を与えてしまったのが地獄の始まりです。
それでも王を愛さずにはいられない麒麟。はたから見ればロマンチックではありますが、当事者はすごくしんどいでしょうね。
最後に尚隆が六太を叱ったのが、この巻における救いだなあと思いました。ときに親子で、ときに相棒で、ときに兄弟。そんな延主従の関係性がよく出ていたと思います。
滅ばない国はないけれど、できるだけこの平穏が長く続けばいい。そう思ったラストシーンでした。
まとめ
再読だけれど面白かったです。やっぱり十二国記は私の青春だなあ。
時間があればちょこちょこ再読していきたいです。