今日の更新は、『NHKにようこそ!』です。
あらすじ
引きこもりの主人公は、新興宗教の勧誘にやってきた少女・岬と出会う。隣人の後輩とともに、「このままではいけない」」と思いつつ迷走する引きこもり人生を送る主人公に、岬は干渉しようとするが……。
「何者かになりたい」という呪い
「何者かになりたい」「自分らしく生きたい」ということ自体が「呪い」なのではないのでしょうか。
個性を生かして働ける人というのは少数派だし、「自分らしい」という言葉は定義があやふやなので追いかけると泥沼に陥ります。
この作品の主人公も「自分だけにしか生きられない人生」を望んでしまったのだと思います。
失うようなものは何も持っていないのに異様に恥をかくことを恐れ、世界を憎悪し、死んでヒーローになることを望む。これはありのままの自分を受け入れられないからです。
今の自分を拒み、空想の中の自分とだけつきあっていれば、前に進めないのは当たり前なんですよね。
主人公にとって、ヒロインである岬に出会うことが、客観的に自分を見るきっかけだったのだと思います。関係性はむちゃくちゃなんですが。
むちゃくちゃな作品だったという記憶はあったんですが読み返してみるとやっぱりむちゃくちゃでしたね……。
ドラッグ、暴力、鬱屈した感情ゆえの差別心。自己満足や弱者への見下し。
それがすべてギャグとしても成立しているから恐ろしいんですよね。逆に真面目な本ではなくてよかったかもしれないです。辛すぎるので。
もう私もアラサーなので主人公に22歳で引きこもりとか言われても「そんなに切実じゃないじゃん」って思うんですが、当事者にとっては重要なんでしょうね。
若いころに読んだときのほうが、この作品を身近に感じられた気がします。
でも今回読み返すことによって、自意識過剰な過去の自分を客観的に笑えるようになりました。
こうして「自分はどうだろう?」と比べてしまうのがこの小説の面白さですね。
ブログの読者さんに青春真っただ中な人がいればこの本を読んでみてほしいです。教官できなかったらそれはそれでで幸せなことだと思いますから。
まとめ
久しぶりに読み返したら共感できなくなっていましたが、それは私が成長したからなんでしょうね。
でも、「何者かになりたい」と悩んでいる人に読んでみてほしいです。