ブックワームのひとりごと

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「無人機」に乗り込む少年たちと軍人少女の邂逅―『86―エイティシックス―』安里アサト

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86―エイティシックス― (電撃文庫)

今日の更新は、安里アサト『86―エイティシックス―』です。

 

あらすじ・書籍概要

サンマグノリア共和国では、無人機が隣国である「帝国」と戦っていた。しかし、その無人機には「人」が乗っていた。共和国では人間とは認められない異人種、「エイティシックス」の戦闘員たちを、軍人少女レーナが指揮をすることになる。

 

「差別」をきっちり描いたエンタメ作品

主人公サイドに厳しい作品なので、キャラクターがひどい目に遭うのが好きな身としては嬉しかったです。

しかしそのような不幸萌えをしている場合ではないほどハードな話ではあります。登場人物は レーナ以外ほぼ全員エイティシックスに差別心を抱いており、彼らと交流したいと思っているレーナの方が異常者扱いされます。

そしてレーナ自身も、育ちのいい人間の無神経さや、世間知らずさを持ち合わせています。エイティシックスたちが、そういうレーナを心から信じられないのも当たり前の話なんですよね。

多少のご都合主義はあるものの、ここまで「差別心」をきっちり描いたエンタメ作品は珍しくて新鮮でした。書こうとしても変に主人公サイドを優遇したり社会の描き方が雑だったりするんですよね。このライトノベルはそこをシビアに書こうとしている。逆に誠意を感じます。

 

もうひとりの主人公、エイティシックスたちを率いるシンも、地獄のような過去の持ち主。彼が戦おうとする理由が非常にしんどい。

それだけに、彼がずっと倒すことを渇望していた相手が倒され、結末を迎えたときの悲しいさわやかさが印象的でした。取り返しのつかないことはたくさんあるけれども、今は前に進めることがうれしい。レーナと一緒に泣き出してしまいそうになりました。

大団円とは言えない話なんですけれども、キャラクターたちがそれぞれの過去にけりをつけ、前を向いて歩き始める素敵なエンディングでした。

逆にここから続けるのどうするんだ? と思いましたが、続きも面白いらしいので読んでみたいです。

 

 

まとめ

評判通りすごく面白かったです! 少しずつ読み進めたいですね。

 地獄みたいな世界に垂らされた一筋の希望、みたいなものが好きな人にはおすすめです。