ブックワームのひとりごと

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もしも愛した人が被差別部落の人だったら―齋藤直子『結婚差別の社会学』

結婚差別の社会学

今日の更新は齋藤直子『結婚差別の社会学』です。

あまり読まないジャンルの本だけれど、面白いと聞いて読んでみたくなりました。

 

あらすじ・書籍概要

被差別部落出身だから」ということで結婚に反対される人々がいる。著者は実際に結婚差別を受けた部落出身者に聞き取り調査を行い、親や当事者の行動を分類した。そこから見えてくる、現代社会の部落差別とは……。

 

結婚差別の実例を紹介しつつそれを分類

平易な文章でありながらとても情報量が多く、「文章が上手い」という感想がまず初めに来ました。

この上手さだけでも読む価値があります。

 

そして、紹介される結婚差別のエピソード。淡々と書かれてはいますが、読んでいるだけで心が苦しいです。

 

(出身について)「それは困る、隠しといてくれ」っていうて。親がね、お父さんが議員さんやったんです。だから「困る」って。相手の人に言われて、だから親には言わんといてくれって。親には絶対言わんといてくれって。で、そんなんやったら、私は(もう)いいって言って。(P82)

 

奥さん(彼女)のお姉さんが二人おるんですよ。二人が家に来て、「住む世界が違うから、離れてあげて」という感じで言われましたね。/最初は「ちょっと(別れるのは)嫌や」って言ったんですよ。そしたら奥さんの方が、どっか連れていかれたんですね、○○(関西地方)かどっか連れていかれて、親戚の家の方に。(P157)

 

それは結婚差別を抜きにしても犯罪だろう、というエピソードもあり、結婚差別をもとにして家族崩壊を起こしてしまうところが恐ろしいですね。

単なるエピソードの紹介ではなく、それを整理してパターン化しているので、ひとつひとつの問題に対して考えやすくなっています。

 

私は部落出身者ではないので、どうしても「自分が恋人に部落出身だと告白されたらどうするか」という視点で考えてしまいます。

普通にしていればいいのだろうけど、じゃあ「普通に振る舞う」ってどういう態度のことを言うのでしょうか。

本の中で述べられているように、「関係がない」と言ってしまえば彼らの出自を無視することになってしまいますし。

読んでるだけで悩んでしまいますね。実際に起こったわけではないのに。

 

終盤は「周囲が結婚差別を受けたカップルをどう支えるか」という話。

でも行政も支援団体も基本は見守ることと選択肢を増やしてあげるだけで、どうするかはカップルに任せるしかない、という結論でした。

真正面から戦うことだけが得策ではない。ときに両親と距離を置くことも大切だということがわかりました。

そして、結婚差別を乗り越えて結婚したカップルは、粘り強く、強い意志を持って行動し続けた人たちです。やっぱり「自分がどうしたいか」を理解している人は強い。そう思いました。

 

まとめ

非常にためになりました。同和地区の問題だけではなく、差別に関心がある人たちには興味深く読めると思います。

広く世の中に読まれてほしい本でした。

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結婚差別 データで読む現実と課題 [ヒューマンライツベーシックシリーズ]

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