ブックワームのひとりごと

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何重にも塗り固められた虚構のステージ―樺山三英『ハムレット・シンドローム』

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ハムレット・シンドローム (ガガガ文庫)

今日の更新は、樺山三英『ハムレット・シンドローム』です。

 

あらすじ・書籍概要

事故により自分がハムレットだと思い込むようになった男、コマツアリマサ。彼が本当に狂っているのかどうかを確かめるため、ソフエは彼の住む城に潜入する。そこは、コマツが客人を巻き込んでハムレットを演じ続ける場所だった。

 

嘘と現実の垣根がないメタフィクション小説

どういう小説なのかひとことでは言い表しにくい本です。それほど虚構と真実、嘘と本音、役柄と役者、舞台と観客の垣根がないんですよね。

読者である私が「こういうことかな?」と納得しかけたとたんに物語が逃げていき、何度も解釈の中で迷子になります。でも、それが面白いです。わけのわからなさが面白い。

 

一応メインの筋としては、自分自身がハムレットだと思い込むコマツが狂っているのかどうか、というのがあります。

しかし読み進めていくほどに、この文章が誰の妄想なのか、あるいは現実なのか、わからなくなっていきます。メインストーリーだと思っていたものが、実はそれほど意味のないものなのではないか、あるいはこの物語に意味のあるストーリーなどないのではないか、と不安になっていきました。

 

わかりやすいオチ、わかりやすいドラマが展開される作品ではないので、人におすすめしづらいです。でも「奇書」や「怪作」という言葉に惹かれてしまう人には楽しめると思います。

 

この作品は久生十蘭の短編「刺客」と「ハムレット」の翻案小説らしいので、原作も気になりました。機会があれば読んでみたいです。

 

まとめ

説明するのが難しくて感想が短くなってしまいました。とりあえず気になる人は読んで見てほしいです。それが一番早いので。

こんな尖ったライトノベル久しぶりに読みましたよ。

ハムレット・シンドローム (ガガガ文庫)

ハムレット・シンドローム (ガガガ文庫)

 
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