ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

日本

「映え」を意識しすぎて思想的にはガバガバ―『長崎の新聞配達』

longride.jp あらすじ・概要 戦後の日本・長崎にやってきて、とある被爆した郵便局員谷口と出会い、その経験を本にしたためたピーター・タウンゼント。タウンゼントの娘イザベル・タウンゼントは、谷口の死後長崎を訪れ、父親が記録した谷口の被爆体験をなぞ…

江戸時代の豪商や百姓が残した遺言から人生を見る―夏目琢史『江戸の終活 遺言から見る庶民の日本史』

あらすじ・概要 戦国時代が終わり、長い平和が続いた江戸時代。そのころ、庶民はどう社会を見ていたのか。江戸時代の豪商や百姓の遺言を読み、当時の生活や社会の価値観について迫る。老境を迎え、自分の人生を振り返る江戸時代の人々の哀しくもいとおしい姿…

日本で育ったアフリカ少年のカメルーンと日本の家族の話―星野ルネ『まんが アフリカ少年が日本で育った結果 ファミリー編』

あらすじ・概要 日本人とカメルーン人の間に生まれ、アフリカで生まれ日本で育ったカメルーン人、星野ルネは、その外見から先入観を持たれることが多かった。そんな彼は家族とのエピソードやカメルーンと日本の文化の違いなどをコミックエッセイとして発表。…

世界観や設定はよかったけどやや惜しい―廣嶋玲子『鳥籠の家』

あらすじ・概要 仲良く家族と暮らしてきた少女、茜は、両親を借金から救うために、名家天鵺家に引き取られ、若君鷹丸の遊び相手となる。天鵺家は、謎の風習に満ち溢れた家だった。過剰に虫を怖れ、鳥を貴び、跡継ぎを守るために繰り返される儀式。鷹丸と仲良…

東京のどこかで貧乏暮らしの青年が日常を生きる―前川つかさ『なにもないシアワセ 大東京ビンボー生活マニュアル』

あらすじ・概要 東京のどこかで、定職につかずぶらぶら貧乏生活をしているコースケ。たまに大家の手伝いをしたり、部屋に彼女がやってきたり、隣の学生と交流したり……。昭和後期の日常を、丁寧な筆致で描く連作短編。

内気で引きこもり気質の漫画家が憧れの日本にやってきた―フー・スウィ・チン『シンガポールのオタク漫画家、日本をめざす』

あらすじ・概要 オタクで引きこもり気質の著者は、日本の漫画が大好き。日本に滞在したときに経験した面白いできごとやカルチャーショック、シンガポールでの引きこもり生活、日本で出版社に持ち込みを試みた日々。内気なシンガポールのオタクの悲喜こもごも…

情報が飽和するコロナ禍の中でニュースをどう取捨選択すべきか―白戸圭一『はじめてのニュース・リテラシー』

あらすじ・概要 巷にあふれるデマ・フェイクニュース。コロナ禍も相まって、真実を知ることはますます困難になっていく。ニュースを受け取る人々は、どのようにしてその良しあしを判断すればいいのだろうか。新聞記者であった著者が、メディア内部の事情を解…

ファミリーレストランの歴史から見る日本の家族と外食の関係―今柊二『ファミリーレストラン 「外食」の近現代史』

あらすじ・概要 日本各地にあるファミリーレストラン。それらはどこから来たのか。明治初期のデパートの食堂から始まって、郊外の路面店やショッピングモールに入るまで、ファミリーレストランの歴史を追っていく。そこには、日本における家族と外食の関係が…

日本精神を鼓舞する作風だった画家は、戦後に身の置き所がなくなる―カズオ・イシグロ『浮世の画家』

あらすじ・概要 戦中、日本精神を鼓舞する作風で評価を得た画家の小野。しかし戦後の社会では、小野は息苦しい生活をしていた。娘の縁談は破綻になり、かつての弟子たちや娘婿からは冷たくされる。小野は、かつての自分を回想しながら、今生きている日本で身…

日本語のプロが辞書編纂を通して、言葉でできた世界を見る―飯間浩明『辞書を編む』

あらすじ・概要 辞書編纂の仕事をしている著者は、新たな版の辞書を作るために「言葉」を追う。日常の中から気になった言葉を収集し、減らす項目、増やす項目について悩み、抽象的な用語の説明に四苦八苦する。言葉のプロが辞書作りを通して、日本語でできた…

「ざまぁ系」が嫌いな私へ、生々しくて優しいハードボイルドサスペンス―『オッドタクシー』

あらすじ・概要 タクシードライバーの小戸川は、女子高生行方不明事件に関わっているのではないかと疑いをかけられる。アイドルオタク、かかりつけ医のところの看護師、犯罪者とさまざまな客を乗せるうちに、小戸川は複数の事件に巻き込まれていく。いくつも…

サンファン1期を見返していたのでキャラごとに感想を書く【ネタバレ含む】

サンファン3期を見ながら、「そういえば1期の内容を大分忘れているな」と思ったのでdアニメストアで見ていました。 今回は2回目の視聴でのキャラ別感想です。 最初に見たときの感想はこちら。 honkuimusi.hatenablog.com 殤不患 マジ強いチートお兄さんだ…

ヤンデレがオチを持っていってしまった―『Thunderbolt fantasy 東離劍遊紀3』

あらすじ・概要 七殺天凌を捜索していた凜雪鴉、殤不患、浪巫謠、捲殘雲。彼らは奇妙な宮殿へと迷い込む。人間界から魔界までさまざまな場所を繋ぐ「無界閣」にいたのは、禍世冥蝗の一味と魔族の刑亥だった。禍世冥蝗の一味に攻撃される殤たちだったが、どう…

ご先祖様の見える少女がお盆の一日を繰り返す―スケラッコ『盆の国』

あらすじ・概要 お盆に帰ってくる先祖の姿が見える少女、秋。ある年の盆、秋は自分が8月15日を繰り返していることに気付く。戸惑う中で、声をかけてくれたのは夏夫という青年だった。秋は夏夫とともに、15日から脱出する方法を探す。しかし夏夫には、ある秘…

格差社会の中で語られるすっとぼけた労働文学―津村記久子『ポトスライムの舟』

あらすじ・概要 29歳のナガセは、工場で働いている。ある日自分の年収がほぼ世界一周にかかる値段であることを知ったナガセは、工場の給金を一年間丸ごと貯め、他の仕事で生活をすることを思いつく。表題作ほか、格差社会を描いた二編を収録した本。

生理用品の歴史から女性解放の歴史がわかる―田中ひかる『生理用品の社会史』

あらすじ・概要 女性に月一回訪れる月経。その不快感を減らしてきたのが生理用品だ。戦前までの女性たちの月経対策や、日本初の生理用ナプキンアンネナプキンの誕生、布ナプキンを巡るイデオロギーと効果まで、日本の生理用品の歴史を追いながらジェンダーに…

女ことばの歴史はことばとイデオロギーの関係を表している―中村桃子『女ことばと日本語』

あらすじ・概要 小説の中や映画の中で女性が話している「~よ、~だわ」という口調。しかしながら、この話し方をする女性は全国的に見てもそれほど多くはない。なぜ、フィクションの中でこのような話し方が流布しているのか。「女ことば」の歴史を追いながら…

絵がうまい人の伝記を絵がうまい人が描いてる―ちさかあや『コミック版世界の伝記 葛飾北斎』

あらすじ・概要 江戸末期に現れた伝説の絵師、葛飾北斎(鉄蔵)。彼は子どものころから絵が大好きで、奉公先で版木を彫る仕事を紹介される。しかしそれも長続きせず、浮世絵を描いていた勝川春章(かつかわ・しゅんしょう)に弟子入りした。しかし型にはまら…

イラン人と結婚したら密な家族関係に入り込んでしまいました―ダリヤ・ミイ『旦那さんはイラン人』

あらすじ・概要 アジア人顔が好きだったはずなのに、イラン人と結婚することになった著者。その夫の家族は、宴会大好きで密な関係を築いていて陽気だった。日本人妻から見たイランの文化や家族関係、日本との価値観の違いを描いたコミックエッセイ。

かわいらしいデザインで読む短歌紹介本―東直子・若井麻奈美『短歌の詰め合わせ』

あらすじ・概要 和歌から進化していった「短歌」。その短歌を「食べ物」「動物」など身近なテーマごとに分け、イラスト、解説とともに一首ずつ紹介していく。そこには作者しか書き留められなかった喜怒哀楽、発見、アイディア、いたずらごころがあった。

北海道での未曾有の熊被害を描いた漫画―戸川幸夫・矢口高雄『野生伝説 羆風/飴色角と三本指』

あらすじ・概要 三毛別の北海道開拓民の集落に、巨大な熊が現れた。力強く、賢い熊は人間の肉の味を覚え、襲撃を繰り返し、集落を恐怖のどん底へ落としていく。男たちとマタギは、協力して熊を撃ち取ろうとするが……。巨大なカモシカとの戦いを描いた「飴色角…

キャラクターに個性がないので疲れた―上田早夕里『華竜の宮 上』

あらすじ・概要 海面が上昇し、平地が沈んでしまった未来の地球。外交官の青澄は、遺伝子改変によって海に適応した人類、海洋民との政治的な調整をしていた。彼は管理用のタグを持たない海洋民の長、ツキソメと出会い、海洋民と陸上民との利益ある共存のため…

設定にツッコミどころが多すぎるが映像とジャイアンはよかった―『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』

あらすじ・概要 ドラえもんの道具を使って家出をすることにしたのび太だったが、どこに行っても土地の所有者がおり、追い出されてしまう。仲間たちもそれぞれ悩みを抱えて家出をすることにした。ドラえもん一行は人間が住み着く前の日本に向かい、そこに自分…

『刀剣乱舞 綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶』(配信)感想

今日の更新は、『刀剣乱舞 綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶』です。正式タイトルは「いくさ世の徒花」に取り消し線が入ります。タイトルがややこしい。あとちょうどいいサムネ画像がなかった。やる気があればあとで作ります。 あらすじ・概要…

ヤマタノオロチ伝説から生まれた儀式と、鳶職の男女が戦う―白井弓子『天顕祭』

今日の更新は、白井弓子『天顕祭』再読感想です。 あらすじ・概要 鳶の若頭、真山は最近雇った女性の鳶、木島が低いところを恐れていると知る。彼女は故郷で「天顕祭」のクシナダヒメに選ばれ、儀式に携わる予定だった。しかしその儀式が不穏なものであると…

「全部俺」の世界で共感や自己投影のおぞましさを描く―星野智幸『俺俺』

今日の更新は、星野智幸『俺俺』です。 あらすじ・概要 盗んだ携帯電話で何気なくオレオレ詐欺をしてしまった主人公は、それをきっかけに次々と「俺」と出会う。最初は三人だった「俺」は、次々に増殖していき、今や世界は「俺」だらけの世界に。自他の区別…

実は多種多様だったニッポンの「結婚」―瀬川清子『婚姻覚書』

今日の更新は、瀬川清子『婚姻覚書』です。 あらすじ・概要 日本における結婚とは何か。著者は日本の各地から結婚に関する文化、習俗、風習を収集。男が娘の家に通うもの、娘が男の家に通うもの、嫁の一時的な里帰りや、かまど神との関係などなど。婚姻制度…

雇用と社会保障の両輪で人々の生活を支える―宮本太郎『生活保障 排除しない社会へ』

今日の更新は、宮本太郎『生活保障 排除しない社会へ』です。 あらすじ・概要 男性を主な労働力とし、長期雇用や女性の家事労働によって家庭を支えるのが日本の福祉モデルだった。しかしながら、雇用の崩壊によって過去の福祉システムは使えなくなっている。…

メルカリで和装の羽織を買ってみたレポ 和洋折衷コーデで街を歩くと案外気楽

今回は、和装の羽織を買って着てみたときの記録をしたためました。羽織を買ってみるまでの経緯、着て街中を歩いてみた感想について話しております。羽織を買ってみたい人の参考になれば幸いです。 着物が着てみたい→ハードル高い→羽織買ってみるか 人に話し…

デマや不穏投書から見る銃後の人々―川島高峰『流言・投書の太平洋戦争』

今日の更新は、川島高峰『流言・投書の太平洋戦争』です。 あらすじ・概要 民衆を苦しめた太平洋戦争。戦地に行った兵隊を支える「銃後」の中で人々は何を考え、どう行動したのか。当時の流言・投書を『特高月報』や人々の日記から抜粋し、開戦から終戦まで…