ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

『トルコ 建国一〇〇年の自画像』内藤正典 岩波新書 

あらすじ・概要 イスラーム国唯一の世俗主義を掲げ、今日まで存在してきたトルコ。その内側には、宗教と政権の対立、クルド人をはじめとする国内のマイノリティへの苦悩が渦巻いていた。国内外の困難と、それに立ち向かおうとするトルコの人々。ニュースでは…

『ミュージアムを知ろう 中高生からの美術館・博物館入門』横山佐紀 なるにはBOOKS別巻 感想

あらすじ・概要 人々に美術や文化、歴史を学ぶきっかけをくれるミュージアム。学芸員や芸術家たちは、展示の可能性を模索してきた。一方で、美術館や博物館には、負の歴史もあった。ミュージアムのいままでとこれから、そして展望を書く。 ミュージアムの過…

『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』ロケット商会 電撃の新文芸 感想

あらすじ・概要 勇者となることが刑罰として扱われている世界。懲罰勇者のザイロは、なりゆきで魔王討伐の武器である「女神」と契約してしまう。ザイロたち懲罰勇者は、絶望的な作戦を任される。 ろくでもない男たちが魔王を倒す ろくでもない男ばっかり出て…

ライト文芸から歴史ものまで 角川文庫のおすすめ本15選

今回のまとめ記事は、角川文庫のおすすめ本について書きました。 ライト文芸から純文学、翻訳まで、広い分野の本を出しているレーベルです。まとめ記事も雑多な内容になりました。 ファンタジー・SF 『聖女ヴィクトリアの考察』春間タツキ 『アナンシの血脈…

『ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える』西田宗千佳 講談社現代新書 感想

あらすじ・概要 新しい動画視聴の方法である、各種サブスクリプションサービス。ネットフリックスを中心に、それらのサービス誕生の歴史をたどる。インターネットが変えた、コンテンツ視聴の文化とは……。 各種サブスクサービスの勃興の話 すごく凝った内容が…

『さわっておどろく! 点字・点図がひらく世界』広瀬浩二郎 嶺重慎 岩波ジュニア新書 感想

あらすじ・概要 見ることに困難がある視覚障害の人たち。その人たちが情報を得るため、点字というものが考案された。視覚障害について知ると、他の人たちが見える世界に縛られていることに気づく。文化人類学者と天文学者というふたりの著者の視点から「さわ…

『カサンドラ症候群 身近な人がアスペルガーだったら』岡田尊司 角川新書

あらすじ・概要 発達障害のある人の伴侶がうつや不安障害になってしまうカサンドラ症候群。しかし、家族の声に耳を傾けてみると、発達障害以外の問題を抱えていることは少なくない。親との関係、職場とのストレス、そして、定型発達のはずの伴侶の事情など、…

『病が分断するアメリカ――公衆衛生と「自由」のジレンマ』平体由美 ちくま新書 感想

あらすじ・概要 先進国で最も新型コロナウイルスの被害が大きかったアメリカ。アメリカの反ワクチンや反マスクの思想から、アメリカの分断を語る。アメリカに蔓延する医療、政治への不信感の原因とは……。 公衆衛生に反抗する人たちの事情 楽しい内容の本では…

『有権者って誰?』藪野祐三 岩波ジュニア新書 感想

あらすじ・概要 「選挙に行こう」と呼び掛けてくる大人たち。しかし実際のところ、選挙に行こうとする有権者というのはどのような存在なのか。有権者の定義から、どのような瞬間が有権者の心を動かすのかまで、選挙を学ぶ学生向けの本。 どんな行動が有権者…

『<超・多国籍学校>は今日もにぎやか! 多文化共生って何だろう』菊池聡 岩波ジュニア新書 感想

あらすじ・概要 横浜市には、外国の人、あるいは外国にルーツのある人々が暮らす団地がある。そこにある小学校もまた、外国籍の子どもや親が外国籍の子どもたちを受け入れている。多様な文化を持つ人々を受け入れ、一緒に暮らしていくための、小学校の取り組…

『非正規公務員という問題 問われる公共サービスのあり方』上村陽治 岩波ブックレット

あらすじ・概要 市民の生活を守るはずの行政の現場で、非正規公務員たちが雇用の不安定さや賃金の少なさにあえいでいる。公立学校の非常勤講師や婦人相談員などの例を上げ、これからの行政での雇用を考える本。 待遇の差と雇用の不安定さの間であえぐ 単純作…

水野俊平『台湾の若者を知りたい』岩波ジュニア新書 感想

「台湾は親日、と言われる中で、台湾の文化や生活を知っている日本人は少ない」という意見は本当にそうです。この本は、身近であるはずなのに知らない台湾の若者文化について書かれています。 台湾の抱える国際問題にはさらりと触れただけで、学校制度のこと…

唐沢孝一『都会の鳥の生態学–カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰』中公新書 感想

あらすじ・概要 大都会には多くの野生の鳥が暮らしている。わざわざ人間の近くに巣をつくるツバメ、ソメイヨシノの蜜を吸うスズメ、生ごみを漁るカラス、小さな鳥を狙う猛禽。鳥たちの多様でしたたかな生存戦略を紹介するとともに、人間と都市に暮らす動物た…

高橋洋友『自殺予防』岩波新書 感想

あらすじ・概要 ニュースや週刊誌を騒がせる自殺だが、実際どのように自殺を防げばいいかはあまり語られていない。社会や政治の単位でやるべきことや、個人として自殺したがっている人とどう付き合うかまで、精神科医の視点で語る。自殺を望む人を治療に導き…

【フォロワーやバズはSNSマーケティングの必須のものではない】飯高悠太『僕らはSNSでモノを買う SNSマーケティングの「新法則」』

あらすじ・概要 今や生活の一部となっているSNS。マーケティングの担当者として、企業はSNSで何を発信していくべきなのか。SNSの到来で変わった価値観、有効な宣伝方法を会話形式で書いた本。 シェアしたい、誰かにおすすめしたいというコンテンツを作る 逆…

【フランス国民を魅了した英雄の栄光と挫折】池田理代子『皇帝ナポレオン』感想

あらすじ・概要 革命後のフランス。王政を倒したのはいいものの、権力を狙う人々の思惑が錯綜し、政治は混乱していた。そんな中、軍人ナポレオンが現れる。彼は圧倒的なカリスマ性と、指揮の才能によって、権力の階段を駆け上がる。 人々を魅了した天才の転…

【お金がない中で貧困を隠す子どもたち】NHKスペシャル取材班『高校生ワーキングプア「見えない貧困」の真実』感想

あらすじ・概要 貧困の中にいる高校たちがいる。進学費用を払えない、奨学金という借金を背負わされる、制服や体操服のおさがりを他人にねだる……等、苦難を続けている高校生たちに、NHKスペシャル取材班が会いに行く。 貧困の中で貧困を隠す子どもたち 貧困…

【パチンコにハマっていく東日本大震災の被災者たち】古川美穂『ギャンブル大国ニッポン』感想

あらすじ・概要 出口の見えない生活の中、パチンコにハマっていく東日本大震災の被災者たち。人は心が弱ったとき、依存症に陥りやすい。著者は日本のパチンコ政策への矛盾や、パチンコへ行くことの容易さの点を指摘する。ギャンブル依存症が多い国として、ギ…

【軍事学者が語る、侵略国家になってしまった国の日常と文化】小泉悠『ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔』

あらすじ・概要 ウクライナへの侵略によって、「プーチン帝国」と独裁国家として語られるようになったロシア。そこで日常を過ごす国民たちはどんな暮らしをしているのか。軍事学者である著者は、自身のロシアでの生活を振り返りながら、ロシアに生きる人々の…

【文化人類学者がろう者の世界に飛び込んだら違いだらけだった】亀井伸考『手話の世界を訪ねよう』感想

あらすじ・概要 ろう者の世界を想像するときに、つい「聞こえなくてかわいそう」という思考になってしまう。しかし著者がろう者の世界に飛び込んだところ、そこでは豊かなコミュニケーションがなされていた。ろう者のための言語、手話を紹介しつつ、健常者と…

【熱中することを描く、直木賞受賞作】森絵都『風に舞いあがるビニールシート』感想

あらすじ・概要 パティシエのお菓子に惚れ込んでいる人、水商売で働いてでも保護犬活動にのめり込む人、仏像に強い執着を持つ人。人には理解されないものに、夢中になる人たちがいる。ひとつひとつは独立した短編だが、共通して何かが好きという感情に狂わさ…

【「できない」発達障害の子どもたちをどう支えどう共存していくか】河原ノリエ『「ややこしい子」とともに生きる―特別支援教育を問う』

あらすじ・概要 じっとしていられない、読み書きや計算が極端にできない、友達付き合いがうまくいかない……。さまざまな問題を抱える発達障害の子どもたち。本人も周囲も、幸せになるにはどうすればいいのか。発達障害を持つ子を育てた著者が語る、「ややこし…

【KindleUnlimited&図書館&本屋を使う】本の探し方どうしてる?個人的本を探す方法5つ

お題「本の探し方どうしてる?小説でも新書でもしばらくハマった作者に飽きたり、作品をすべて読んでしまったりした時。次の本をどうやって探してますか?」 面白そうなはてなブログお題があったので、個人的に本を探す方法5つをまとめました。 ライト文芸…

【女性同士のカップルが囚われのパートナーを救って社会を救う】小川一水『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2』

あらすじ・概要 夫婦で昏魚(ベッシュ)と呼ばれる魚を獲る世界で、女同士の漁師として生きていこうとするテラとダイオード。自分たちが生きられる場所を探すふたりだが、ダイオードが彼女の生まれた氏族、ゲンドー氏にさらわれてしまう。テラはダイオードを…

【「東洋一」を目指した図書館の歴史と、「何のために本を集めるか」問題の変遷】長尾宗典『帝国図書館――近代日本の「知」の物語』

あらすじ・概要 「東洋一」を目指して作られた日本の帝国図書館。しかし、その歴史は平坦なものではなかった。図書を買う金銭が不足していた時期、マナーの悪い利用者、そして太平洋戦争中の略奪と検閲。悪い面もある歴史とともに、帝国図書館と日本の図書館…

【都市遺跡で迷っていたら謎の人型知性体と出会いました】田中ロミオ『人類は衰退しました3』

あらすじ・概要 衰退した人類が暮らす「わたし」の村に電気がやってきた。「ヒト・モニュメント計画」によって盛り上がる村だが、妖精さんたちはどこかに行ってしまう。そんな折、「わたし」は都市遺跡の調査中に迷子になってしまう。機能を停止した都市の中…

【免許返納や公共交通機関の充実で支援を】毎日新聞生活報道センター『高齢ドライバー―加害者にならない・しないために』

あらすじ・概要 近年、高齢ドライバーの事故が多発している。お年寄りを事故の加害者にしないために、何ができるだろうか。人々が家族の中ののお年寄りに免許返納をお願いした実例から、行政側からできる努力についてなど、高齢ドライバー問題を考える一冊。…

【影武者少女の、つかの間の家族関係とその終わり】須賀しのぶ『帝国の娘』

あらすじ・概要 山奥の村で、狩りをして生活していたカリエは、ある日エディアルドという男に誘拐され、アルゼウス皇子の影武者になれと迫られる。しぶしぶ皇子としての教育を受けたカリエは、次の皇帝を選ぶ「皇子宮」へと向かう。そこではカリエも含む4人…

【天才でもサイコパスでもない一般人が、クローズドサークルでデスゲームをしたら】米澤穂信『インシテミル』

あらすじ・概要 べらぼうに高い時給に惹かれて、謎のアルバイトに集った男女。そこではおかしな構造の館で過ごさなければならなかった。殺害を肯定するようなルール、探偵や助手というロールを演じると報酬が上がるシステム。やがて第一の殺人が起こり、デス…

【プログラマーやエンジニアのための同人活動指南】親方project『技術同人誌を書こう! アウトプットのススメ』

あらすじ・概要 技術書典やコミケなどの即売会で、「技術同人誌」が注目されるようになっている。技術、特に工学系の分野で、同人誌を作るのにはどうすればいいのか。執筆の心構えから、原稿の作り方、イベント当日にやるべきことまで、技術同人誌の出し方が…