ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

歴史

イタリアの歴史と文化を映し出すパスタという食べ物―池上俊一『パスタでたどるイタリア史』

あらすじ・概要 イタリアの国民食、パスタ。小麦粉を練って作る麺で、短いもの、長いもの、変わった形のもの、さまざまな種類がある。パスタの歴史を紐解いてみると、そこにはイタリアの成り立ちや文化、ナショナリズムが関わっていた。今や世界中で食べられ…

人類が感染症に、侵され戦い勝つ歴史―岡田晴恵『人類VS感染症』

あらすじ・概要 ペスト、天然痘、エイズ、風疹、インフルエンザ。何度も人類の前に立ちはだかり、甚大な被害を出してきた感染症。感染症と戦うために、人類は何をしてきたのか。感染症撲滅にかけた人々の行動や研究を紹介し、人と感染症の歴史を振り返る。

絵がうまい人の伝記を絵がうまい人が描いてる―ちさかあや『コミック版世界の伝記 葛飾北斎』

あらすじ・概要 江戸末期に現れた伝説の絵師、葛飾北斎(鉄蔵)。彼は子どものころから絵が大好きで、奉公先で版木を彫る仕事を紹介される。しかしそれも長続きせず、浮世絵を描いていた勝川春章(かつかわ・しゅんしょう)に弟子入りした。しかし型にはまら…

ウイルスの発見から感染の仕組み、未来への展望まで―岡田吉美『ウイルスってなんだろう』

あらすじ・概要 さまざまな感染症を引き起こし、人間の脅威であるウイルス。しかし、ウイルスを発見し研究することによって、科学は大きな進歩をしてきた。ウイルス発見の科学史から、ウイルスの特徴の奇妙さ、ウイルスがもたらした技術などを紹介する、学生…

「魔女」を治療しようとした16世紀の医者の謎解き―槇えびし『魔女をまもる。』

あらすじ・概要 16世紀、魔女狩りの嵐が吹き荒れるドイツ。そこでひとりの医者が魔女を治療しようとしていた。ヨーハン・ヴァイヤーは、魔女と呼ばれる女性たちの奇行を「病気」なのではないかと思い、魔女と噂される老女や人狼に襲われた事件を調査する。精…

WHOの政治戦から見る人類と病との戦い―詫摩佳代『人類と病 国際政治から見る感染症と健康格差』

あらすじ・概要 新型コロナウイルスよりずっと前、ペストや腸チフスの時代から、人類は病と闘ってきた。人類の「病との戦い」はどう進歩し、どのような政治的駆け引きがなされてきたのか。WHOの取り組みとその中の政治戦を紹介しながら、人類と病の現代史を…

北海道での未曾有の熊被害を描いた漫画―戸川幸夫・矢口高雄『野生伝説 羆風/飴色角と三本指』

あらすじ・概要 三毛別の北海道開拓民の集落に、巨大な熊が現れた。力強く、賢い熊は人間の肉の味を覚え、襲撃を繰り返し、集落を恐怖のどん底へ落としていく。男たちとマタギは、協力して熊を撃ち取ろうとするが……。巨大なカモシカとの戦いを描いた「飴色角…

主人公ダイアナに魅力を感じられなかった―『ダイアナ』

あらすじ・概要 保育士から皇太子妃になったダイアナ。しかしダイアナはチャールズ皇太子と離婚し、1997年に事故で死亡する。映画ではダイアナの恋愛、慈善事業への参加、パパラッチに追いかけまわされる日々を描き、彼女の人生に迫ろうとする。

映画俳優がモナコに嫁いで公妃を「演じる」―『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』

今日の更新は、『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』です。 あらすじ・概要 映画俳優からモナコの公妃となったグレース・ケリー。窮屈な社交の世界に疲れ、映画の世界に戻りたいと願ってしまう。しかし、そんな彼女を世間はバッシングし……。グレースは、…

「無症状キャリア」の人生を狂わせていいのか―金森修『病魔という悪の物語 チフスのメアリー』

今日の更新は、金森修『病魔という悪の物語 チフスのメアリー』です。 あらすじ・概要 アイルランド系移民で館の使用人だったメアリー・マーロウ。料理が上手く屋敷の主人からも信頼を得ていたが、彼女は腸チフスの無症状キャリアだった。今まで働いた屋敷で…

デマや不穏投書から見る銃後の人々―川島高峰『流言・投書の太平洋戦争』

今日の更新は、川島高峰『流言・投書の太平洋戦争』です。 あらすじ・概要 民衆を苦しめた太平洋戦争。戦地に行った兵隊を支える「銃後」の中で人々は何を考え、どう行動したのか。当時の流言・投書を『特高月報』や人々の日記から抜粋し、開戦から終戦まで…

どこがどう面白いのか皆目わからないよ!―岩明均『ヘウレーカ』

今日の更新は、岩明均『ヘウレーカ』です。 あらすじ・概要 スパルタ出身のダミッポスは、シチリアのシラクサに辿りつき、そこでクラウディアという女性と出会う。ローマ人でありながらシラクサを愛するクラウディア。ローマが攻め込み、ローマ人が連行させ…

王家を中心としたイギリス史ダイジェスト―池上俊一『王様でたどるイギリス史』

今日の更新は、池上俊一『王様でたどるイギリス史』です。 あらすじ・概要 現在は立憲君主制の国イギリス。その王家はいつからあるのか、どのような歴史をたどってきたのか。アングロ・サクソンの時代から、現在のエリザベス女王の御代まで、イギリスの国王…

ビルマとは何か、そこで日本は何をしたのか―田辺寿夫『ビルマ 「発展」のなかの人びと』

ちょっとお久しぶりです。旅行に行っていました。その話は機会があれば書くとして。 今日の更新は、田辺寿夫『ビルマ 「発展」の中の人びと』です。 あらすじ・書籍概要 かつて第二次世界大戦で戦地になり、今は軍事政権が支配しているビルマ(ミャンマー)…

情報量がめちゃくちゃ多い中世の仕事紹介本―グレゴリウス山田『十三世紀のハローワーク』

今日の更新は、グレゴリウス山田『十三世紀のハローワーク』です。 ずっと買いたかったけど値段で二の足を踏んでいた本。思い切って買っちゃいました。 あらすじ・書籍概要 十三世紀の人々は、どのような仕事をしていたのだろうか。パン屋や乳母などのメジャ…

現実を拒み浪費を繰り返した国王―『ルートヴィヒ』(ルキノ・ヴィスコンティ)

今日の更新は、ヴィスコンティの映画『ルートヴィヒ』です。 あらすじ ドイツの領邦のひとつ、バイエルンの国王ルートヴィヒ2世が即位した。彼は芸術に耽溺し、浪費を繰り返す。おりしもプロイセンがドイツを統一しようとしている中、バイエルンはオースト…

シベリア抑留から帰ってきた父親の戦後個人史―小熊英二『生きて帰ってきた男――ある日本兵の戦争と戦後』

今日の更新は、小熊英二『生きて帰ってきた男――ある日本兵の戦争と戦後』です。 あらすじ・書籍概要 北海道の佐呂間に生まれた少年謙二は、1944年に出征する。その先でシベリアへと連れていかれ、抑留生活が始まった。著者が自身の父から人生を聞き取り、補…

独裁政権指導者の父の影に惑い悩む子どもたち―タニア・クラスニアンスキ『ナチの子どもたち 第三帝国指導者の父のもとに生まれて』

今日の更新は、タニア・クラスニアンスキ『ナチの子どもたち 第三帝国指導者の父のもとに生まれて』です。 あらすじ・書籍概要 ナチス政権が崩壊したあと、その指導者の家族はどうなったのか。子どもたちを追跡し、彼らの行動から「親の罪を背負うとはどうい…

江戸時代の女性画家はどう生きたか―パトリシア・フィスター『近世の女性画家たち―美術とジェンダー』

あらすじ・書籍概要 江戸に生きた女性画家たちは、女性ゆえに社会通念との軋轢に悩み、よりよい創作環境を模索していた。江戸時代から明治時代にかけて、絵を志した女性たちの人生を伝える本。

明治帝に仕えた女官が若い時代を回想する―山川三千子『女官 明治宮中出仕の記』

今日の更新は、山川三千子『女官 明治宮中出仕の記』です。 あらすじ・書籍概要 明治天皇と昭憲皇太后に仕えた女官が、当時のことを回想する。明治天皇と昭憲皇太后のひととなり、宮中の文化、女官として働くときの悩みなど、女官でしか語れない情報を記した…

お屋敷で働く老執事の取り返せない過ち―『日の名残り(映画)』

今日の更新は、実写映画のほうの『日の名残り』です。 一度見たいと思っているときに、Amazonで有料レンタルなのを見つけて借りました。 あらすじ・概要 ドライブ旅行に出た老執事は、過去を回想し始める。ダーリントンのお屋敷で働くスティーブンス。そこに…

父親が語るシベリア抑留―おざわゆき『凍りの掌 シベリア抑留記』

今日の更新は、おざわゆき『凍りの手』です。 シベリア抑留の話と聞いて気になった作品。 あらすじ 著者は父のシベリア抑留の話を漫画にしようと、聞き取りを始める。学徒出陣の対象者として満州に向かった著者の父は、終戦後ロシア軍にシベリアに連れていか…

トラクターの技術は世界をどう変えたか―藤原辰史『トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』感想

今日の更新は藤原辰史『トラクターの世界史』の感想です。 とあるブログで紹介されていて興味を持った本です。 書籍概要 畑を自動で耕す道具、トラクター。その発達は農業だけでなく、社会全体を変えた。各国のトラクターの歴史を振り返りつつ、トラクターが…

内容は面白かったけど訳者のあとがきがダメ―ソル・フアナ『知への賛歌 修道女フアナの手紙』感想

今日の更新は『知への賛歌 修道女フアナの手紙』です。 「本は人生のおやつです」で買ってきた本です honkuimusi.hatenablog.com 書籍概要 類まれなる知的好奇心と文才を持ちながら、17世紀メキシコという女子教育に理解がなかった時代に生まれたソル・フ…

少年兵への憎悪と庇護の間で揺れる軍人がつらい『ヒトラーの忘れもの』感想

今日の更新はドイツ・デンマークの映画『ヒトラーの忘れもの』です。 Amazonからビデオのクーポンをもらったのと、週末100円セールがあったのでレンタルを買ってみました。 あらすじ WWⅡ終結間もないデンマーク。捕虜になったドイツの少年兵たちが、砂浜で地…

強制収容所を生き延びた父親との断絶 アート・スピ―ゲルマン『マウス アウシュヴィッツを生き延びた父親の物語』再読感想

久しぶりに読み返したくなった漫画です。 あらすじ ポーランドの町々にカギ十字の旗が翻った。ごくふつうの暮らしをしていたユダヤ人たちは、その日からナチスの脅威にさらされていく。ゲットー。隠れ家。闇市。裏切り。収容所。死の恐怖。脱出行。…日々の営…

強制収容所を生き延びたユダヤ人医師の記録 ヴィクトール・フランクル『夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録』再読感想

書籍概要 ナチス・ドイツ政権下、ユダヤ人として強制収容所送りになったヴィクトール・フランクル。過酷な環境に苦しむ一方で、医師らしい冷静な視点で収容所を俯瞰する。アウシュビッツを生き延びた男性の手記。

「温まりたい」という欲求から生まれた暖房の歴史 ローレンス・ライト『暖房の文化史 火を手なずける知恵と工夫』感想

『森薫拾遺集』に参考文献として載っていたもの。 honkuimusi.hatenablog.com 書籍概要 人間が寒さから逃れるために作り出した「暖房」。たき火から暖炉、ストーブ、薪から化石燃料へと、テクノロジーの進歩によってそのしくみは変わっていく。暖房から人類…

ウエストを締め付ける下着の過去といま 古賀令子『コルセットの文化史』感想

『森薫拾遺集』に参考文献として載っていた本です。 honkuimusi.hatenablog.com 書籍概要 ウエストを締め付け、くびれを作る下着コルセット。それはどこから発祥し、どのように発展していったのか。図やイラストを見せつつ、コルセットの歴史を解説した本。

ソビエト・ロシアの収容所で生きた日本人たちの生活 辺見じゅん『収容所から来た遺書』感想

収容所と書いて「ラーゲリ」と読みます。 あらすじ 第二次大戦後、「戦犯」としてソビエト・ロシアの収容所(ラーゲリ)に収容された軍人の男性たち。日本に帰る日を夢見て、貧しい食事や厳しい労働に耐えていた。そんな中、日本人の中心的人物が病気で臥せ…