ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

犯罪

社会のヒーローなら何でも許されるわけではないです―『ゴヤの名画と優しい泥棒』

あらすじ・概要 イギリスの老人、ケンプトン・バントンは老人や寡婦もBBCの放送料を払わなければならないことに憤りを感じ、息子とふたりで社会活動をしていた。政治活動のためにロンドンに向かったケンプトンは、そこでナショナル・ギャラリーのゴヤの名画…

ヤクザをやめた男たちは厳しい世間にさらされる―廣末登『ヤクザと介護 暴力団離脱者たちの研究』

あらすじ・概要 今は介護の仕事をしている元ヤクザ。著者が聞き取った彼の半生は、犯罪と裏社会の人間関係で満ちていた。ひとりの元ヤクザの人生を語りつつ、ヤクザを離れた人々のその後を考える。暴対法によってヤクザを排除しつづける社会は、本当に安全な…

老人三人組が銀行を襲って自分たちを虐げたものをぎゃふんと言わせる―『ジーサンズ はじめての強盗』

あらすじ・概要 銀行に真面目に支払ってきた自らの年金を奪われた三人の老人は、生活と復讐のために銀行強盗を計画する。家族のことや病気など、それぞれの事情を抱え、老体に鞭打ちながら達成しようとした、大胆不敵なその計画とは……。

煮え切らない内容で面白くなかった―鈴木伸元『加害者家族』

あらすじ・内容 ある日自分の家族が加害者になったら……。犯罪者の数だけ加害者家族がいる。家族らはいやがらせや脅迫を受け、住んでいた土地から逃げざるを得ない場合も多くある。被害者への罪悪感と「まさかうちの家族が」という感情の間で揺れながらも、過…

妻を殺された男が真犯人に復讐するため行動するが、真実は残酷だった―『キュクロプス』

あらすじ・概要 妻と浮気相手を殺した罪で服役していた篠原は、住んでいた町に帰ってきた。彼は、松尾という刑事に促され、妻を殺した真犯人に財前に復讐することとなる。情報屋の男も巻き込み、事件を探っていく篠原だったが、篠原がある女性を助けたことか…

忙しい人向けの実写化―『悪の教典』(実写映画版)

あらすじ・概要 明るく有能、生徒達にも人気がある英語教師の蓮見。彼は目的のために次々と殺人を起こすサイコパスだった。赴任した学校でも保護者、教師、生徒など邪魔者を消していく蓮実。その行動はある破滅的展開へ結びつく。

やくざより暴力的な刑事が抗争を止めるために事件を追う―『孤狼の血』(実写映画版)

あらすじ・概要 若い刑事の日岡は、暴力団を相手とする部署へ配属される。そこにいたのは、暴力団を操るためなら脅しも暴力も使う男、大上だった。彼は大上と失踪した金融会社社員について調べることになる。日岡は大上に反発しつつも、その驚異的な支配力に…

うだつの上がらない元東大生が銭湯で死体処理を手伝って成長する―『メランコリック』

あらすじ・概要 うだつの上がらない元東大生、和彦。彼は銭湯で高校の同級生百合と再会し、彼女に会いたいがために銭湯でアルバイトすることになる。しかしそこは、殺し屋が人を殺害する場所だった。死体処理後の掃除をする羽目になった和彦だが、高額な給料…

死体の一人称によって語られる、幼き殺人者のサスペンス―乙一『夏と花火と私の死体』

あらすじ・概要 9歳だった「わたし」は友達に殺された。友達とその兄は、わたしの死を隠蔽するため死体を隠そうとする。死体を一人称とした証拠隠滅サスペンスが始まる……表題作ほか、とある家の女中となった女性が見た、奇妙で恐ろしい夫婦の姿を描く「優子…

緊急ダイヤルのオペレーターが誘拐事件を解決しようとする、会話劇サスペンス―『THE GUILTY ギルティ』

あらすじ・概要 ある事件によって一線を退いた警察官のアスガーは、緊急ダイヤルのオペレーターとして働いている。そんな中、自動車内の女性から電話が来た。どうやら彼女は誘拐されているらしい。アスガーは、自分が室内から動けない中女性を助けようと努力…

俳優が記憶喪失の殺し屋と入れ替わって事件に巻き込まれて、一方殺し屋は恋をしている―『鍵泥棒のメソッド』

あらすじ・概要 売れない俳優の桜井は、銭湯で転んで記憶喪失になった羽振りのいい男とロッカーの鍵を入れ替えて、その男になりすます。しかし彼は、裏社会に関わっている殺し屋だった。危険な仕事を引き受ける羽目になって悩む桜井。一方桜井と入れ替わった…

麻薬捜査班が麻薬取引を追うために韓国チキンの店を経営する―『エクストリーム・ジョブ』

あらすじ・概要 なかなか結果を出すことができず上司に叱責ばかりされている麻薬捜査グループの5人は、麻薬取引グループの張り込みをするため監視すべき建物の前のフライドチキン店を買い取る。しかし、そこで売った韓国チキンが売れに売れ、5人はチキンを…

クズとクズが精神的に殴り合う話―「ミュージカル『スリル・ミー』」(5月29日20:00公演配信版)

サムネ画像今回の公演じゃないんですがちょうどいいものがなかったので許してほしい。 あらすじ・概要 殺人犯である「私」は、仮釈放のための審議に出席する。「私」は「彼」についてそこで語り始めた。「彼」は弁護士を目指すエリートでありながら、ニーチ…

童顔の女優が、SNSで知り合った男性とテレビ通話するとこうなる―『SNS 少女たちの十日間』

あらすじ・概要 オーディションで選ばれた三人の童顔の女優たち。彼女らは子ども部屋のセットに入り、12歳と偽ったSNSアカウントからコンタクトを取ってきた男性と会話する。プロフィール上は12歳の少女たちに、性的な言葉や性器の写真を送り付けてくる男性…

アイデアはいいけど減点要素が多すぎる―エイドリアン・マッキンティ『ザ・チェーン 連鎖誘拐』

あらすじ・概要 シングルマザーのレイチェルは、ある日娘のカイリーを誘拐される。それは「チェーン」と呼ばれる数珠つなぎの誘拐事件で、レイチェル自身も子どもを誘拐しなければカイリーは解放されないという。レイチェルは元夫の兄弟であるピートを巻き込…

コロナ禍の中で「普通の人」のモラルが崩壊し始めている―『NHKスペシャル 追跡"コロナ犯罪"』

あらすじ・概要 出口の見えないコロナ禍の中、犯罪に手を染める普通の人々が増えている。持続化給付金を不正受給した主婦集団、闇バイトに手を出す大学生たち。彼らはなぜ、どのようにして犯罪者となったのか。

受刑者にお金をかけることは「社会の益」になるだろうか―『ドキュランドへようこそ 世界一豪華な刑務所の内側』

www.nhk-ondemand.jp テレビ番組の感想は普段書かないんですが、これは面白かったので書き残しておきます。 あらすじ・概要 ノルウェーのハルデン刑務所は、「世界一豪華な刑務所」と呼ばれている。受刑者の個室はシャワーやテレビを備え、恋人や妻とコテー…

女キャラが描けてないし長せりふも寒い―中村文則『悪と仮面のルール』

あらすじ・概要 異常な父親に「邪」として育てられようとした主人公。しかし父が自らの養女で主人公の幼馴染、香織に手を出そうとしたことから、主人公は父を殺してしまう。そしてその 後、主人公は顔と名前を変えて、父の死をきっかけに離れ離れになった香…

ツッコミどころが多いが私は好き―『アクダマドライブ』

あらすじ・概要 大阪によく似た町、カンサイに住む「一般人」は、一枚の500イェン玉を持ち主に返そうとしたことから、犯罪者たち「アクダマ」を集めた計画に巻き込まれる。謎のしゃべる猫ロボットに導かれ、カントウへと通じる伝説的乗り物、シンカンセンか…

障害者の意思を尊重しつつ加害者にしない方法って何だろう―山本譲司『累犯障害者』

あらすじ・概要 刑務所で服役した元議員の著者は、そこで犯罪を犯した障害者たちの姿を見て衝撃を受ける。著者は累犯障害者について調べることを決意し、さまざまな累犯障害者について聞き取りを行う。殺人を犯した知的障害者、売春で生計を立てていた親子二…

文化祭準備中の学校でスーパー殺戮タイム―貴志祐介『悪の教典 下』

あらすじ・概要 文化祭準備中、殺人が生徒に露見しそうになった蓮実。彼はクラスの生徒たちを皆殺しにして証拠を隠滅することを決意する。かくして学校は殺戮の現場となった。次々と殺されていく子どもたち。怜花たちは、見えない殺人鬼から逃げ切る方法を模…

イケメンサイコパス教師が学校をめちゃくちゃにする―貴志祐介『悪の教典 上』

あらすじ・概要 優秀で生徒からの人望も厚く、ユーモアもある教師、蓮実聖司。しかし、その正体は共感能力のない殺人鬼だった。自分を邪魔するものを退学、辞職、死亡へと追い込んでいく蓮実。一方で、蓮実の教え子の怜花は、類まれな第六感で蓮実に恐怖を覚…

美術館とカルティエがかわいそう―『オーシャンズ8』

今日の更新は、『オーシャンズ8』です。 あらすじ・概要 刑務所を出たばかりのデビー・オーシャンは、セレブ達が集まる「メットガラ」でカルティエの首飾りを盗むことを思いつく。デビーはさまざまな仲間を集め、計画を張り巡らせてメットガラに挑む。セキ…

犯罪を繰り返した少年が罪を犯さないよう矯正される―アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』

今日の更新は、アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』です。 あらすじ・概要 15歳のアレックスは暴力、盗み、強姦など、破滅的な犯罪を繰り返していた。ある老女の家を襲ったときに当局に捕まり、謎のプログラムを受けさせられる。それは、アレッ…

朱ちゃん因縁に巻き込まれまくってかわいそう―『PSYCHO-PASS サイコパス』感想その2

今日の更新は、『PSYCHO-PASS サイコパス』12~22話の感想です。 1クール目の感想はこちら。honkuimusi.hatenablog.com あらすじ・概要 朱の友人を殺した男、槙島は犯罪を犯しても犯罪係数が上がらない特殊体質の男だった。槙島を追うべく、執行官と監察官は…

お金に狂った看護婦が起こした連続殺人―森功『黒い看護婦―福岡四人組保険金連続殺人』

今日の更新は、森功『黒い看護婦―福岡四人組保険金連続殺人』です。 あらすじ・概要 貧しい家庭に育った看護婦の吉田和子。彼女は金銭への執着心から、詐欺を繰り返すようになる。彼女の虚言と脅しによって、三人の友人が巻き込まれていく。和子が率いる四人…

弁護士も裁判も「群盲象を評す」である―『三度目の殺人』

今日の更新は、映画『三度目の殺人』の感想です。 あらすじ 殺人の前科がある三隅は、自分の勤める工場の社長を殺した。弁護士の重盛は、彼を担当することになる。だが、三隅の供述は二転三転し、重盛はそれに振り回されていく。やがて、意外な事実が明らか…

山岳ベースで犯された仲間殺しの罪―永田洋子『十六の墓標(下)―炎と死の青春』

今日の更新は、永田洋子『十六の墓標―炎と死の青春』です。 前巻の感想はこちら。 honkuimusi.hatenablog.com あらすじ・書籍概要 山岳ベースに移り、連合赤軍を結成した永田洋子ら。閉鎖的な環境の中で、総括・自己批判は暴力的な意味合いを強めていく。そ…

無罪になった精神障害者はどこへ行くのか―岩波明『精神障害者をどう裁くか』

今日の更新は、岩波明『精神障害者をどう裁くか』です。 あらすじ・書籍概要 刑法39条により定められている「心神喪失者の行為は、罰しない」という一文。それによって精神障害者は罪に問われないことがある。だが、罪を問われなくなってからはどうなるのか…

ある日家族が犯罪者になったら―松橋犬輔・北尾トロ『裁判長!ぼくの弟懲役4年でどうすか』感想

今日の更新は、松橋大輔『裁判長!ぼくの弟懲役4年でどうすか』です。 松橋「大」輔だと思っていたんですが松橋「犬」輔なのか。どうりで検索にひっかからないと思いました。 あらすじ 裁判漫画を描いていた著者の弟が突然逮捕された。容疑は売春防止法違反…