ブックワームのひとりごと

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荻原規子『西の善き魔女』感想のまとめと総評

西の善き魔女 全8冊合本版 (角川文庫)

今日の更新は、荻原規子『西の善き魔女』シリーズの感想のまとめです。

 

感想記事一覧

少女は首飾りをきっかけに荒野を出る―荻原規子『西の善き魔女1 セラフィールドの少女』

女の園で女王候補を巡る陰謀に立ち向かう―荻原規子『西の善き魔女2 秘密の花園』

王宮にやってきたフィリエルの決断―荻原規子『西の善き魔女3 薔薇の名前』 

女王の末裔は愛する人を追って南に向かう―荻原規子『西の善き魔女4 世界のかなたの森』 

走る学者少年と女王の孫の帰還―荻原規子『西の善き魔女5 闇の左手』

荒野に暮らす少年少女の出会い―荻原規子『西の善き魔女6 金の糸紡げば』

女王候補は東の国で陰謀と出会う―荻原規子『西の善き魔女7 銀の鳥プラチナの鳥』 

主人公たち何もわかってないのでかわいそうだよね―荻原規子『西の善き魔女8 真昼の星迷走』 

 

総評

とにかく読者を引っ張っていく力が強い作品でした。隠された女王の孫の大冒険。そしてルーンとフィリエルの恋物語。「続きが見たい」と思わせる語り口が素晴らしいです。

 

フィリエルがルーンを助けるために物理的に努力するところが好きです。愛が重い女の子と、男を救う女の子大好き。愛されるだけではなく主体的に愛する女であるところが、フィリエルのかっこよさですね。

一方のルーンも面倒な男ではありますが「フィリエルは僕が守ってあげなきゃ」と思っていそうなところがいとおしいです。つまり守る女と守る男のカップルなんですよ。力関係が行ったり来たりしながら仲が進展していくのがいい。

 

世界観のどんでん返しも面白かったです。登場人物がわけがわからなくてぽかんとしているところはかわいそうですが、読者側からは「あ、そういうことなのね!」と気づけます。この読み方の転回がすっきりします。

 

しかしながら、現代の価値観に照らし合わせてみると古いところも多いです。「男はこうで女はこう」のような性的役割を固定するような発言がたびたび見られます。グラールの女性の「女は賢く男をおだてる」みたいな発想ももはや現代的ではありません。

この作品を刊行した当時は新しい描写だったのだろうと思うんですが、現代の青少年に勧めるときは気をつけた方がいいでしょう。

西の善き魔女 全8冊合本版 (角川文庫)

西の善き魔女 全8冊合本版 (角川文庫)

  • 作者:荻原 規子
  • 発売日: 2016/02/12
  • メディア: Kindle版
 
西の善き魔女1 セラフィールドの少女 (角川文庫)

西の善き魔女1 セラフィールドの少女 (角川文庫)

  • 作者:荻原 規子
  • 発売日: 2013/08/08
  • メディア: Kindle版
 

 

女王候補は東の国で陰謀と出会う―荻原規子『西の善き魔女7 銀の鳥プラチナの鳥』

西の善き魔女7 銀の鳥 プラチナの鳥 (角川文庫)

今日の更新は、荻原規子『西の善き魔女7 銀の鳥プラチナの鳥』です。

まとめ記事書こうとしたときにこれだけ感想を書いていなかったことに気付きました。

 

あらすじ・概要

女王の座をレアンドラと争うアデイルは、女学校の学友ヴィンセントとともに東の国トルバートへ向かうことに。そこで出会った傭兵隊の青年は、ルーンにどこか似ていて……。アデイルはトルバートで動いている陰謀に気付き、砂漠を走る。

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主人公たち何もわかってないのでかわいそうだよね―荻原規子『西の善き魔女8 真昼の星迷走』

西の善き魔女8 真昼の星迷走 (角川文庫)

今日の更新は、荻原規子『西の善き魔女8 真昼の星迷走』です。

 

あらすじ・概要

異色の女王候補フィリエルは、この世界の管理者フィーリに候補として認められていない。女王のバードはフィーリに成り代わることができるらしいが、それには赤ん坊に生まれ変わったバードを育てることが必要だった。かくしてバードと旅に出たフィリエル。一方ルーンは、もうひとりのバードとつらい旅路を強いられていた。

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結婚式の準備をしながら暗殺阻止―長月遥『花冠の王国の花嫌い姫6 祝福の赤薔薇』

花冠の王国の花嫌い姫 祝福の赤薔薇 (ビーズログ文庫)

今日の更新は、長月遥『花冠の王国の花嫌い姫6 祝福の赤薔薇』です。

 

あらすじ・概要

大砂漠帝国皇帝と離縁し、晴れて正式に結婚することになったイスカとフローレンス。しかしそこで、正教会の聖王アリオンの暗殺計画が持ち上がる。アリオンを救うため、正教会に戦争の口実を持たせないため、イスカとフローレンスは暗殺阻止に立ち上がる。

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花粉症の姫、いい性格の聖職者と戦う―長月遥『花冠の王国の花嫌い姫5 クロサンドラの聖人』

花冠の王国の花嫌い姫5 クロサンドラの聖人 (ビーズログ文庫)

今日の更新は、長月遥『花冠の王国の花嫌い姫5 クロサンドラの聖人』です。

 

あらすじ・概要

まだ大砂漠帝国の皇帝と離縁ができていないフローレンスは、静養を建前に皇帝の兄が住むズィーネへ向かう。彼は先の反乱の首謀者だった。しかし正教会の重要人物メレディスの陰謀により、フローレンスはイスカとともに海上の船へと向かう。

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かわいくて責任感のあるママと誠実な青年のラブストーリー―望公太『娘じゃなくて私が好きなの!?』

娘じゃなくて私が好きなの!? (電撃文庫)

今日の更新は、望公太『娘じゃなくて私が好きなの!?』です。

 

あらすじ・概要

死んだ姉の代わりに、姪を我が子として育ててきた綾子。そんな綾子は、ある日娘の幼馴染で息子同然に思ってきた青年、巧に告白される。彼は子どものころからずっと綾子を想ってきたのだという。彼の将来を思って、綾子は巧に幻滅されようと策を講じるのだが……。

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いい性格してるヒロインが砂漠の反乱を止める―長月遥『花冠の王国の花嫌い姫4 縁を結ぶゼラニウム』

花冠の王国の花嫌い姫4 縁を結ぶゼラニウム (ビーズログ文庫)

今日の更新は、長月遥『花冠の王国の花嫌い姫4 縁を結ぶゼラニウム』です。

 

あらすじ・概要

兄、セリスに大砂漠帝国に嫁ぐことを命じられたフローレンス。イスカと「1年経ったら離縁して戻ってくる」と約束し、フローレンスは帝国に向かった。そこでは、現在の皇帝への反乱が計画されているようで……。フローレンスはイスカのため、国益のため、大陸の平和のため裏工作に奔走する。

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戦記ものになってもきっちり面白い少女小説―長月遥『花冠の王国の花嫌い姫3 騎士と掲げるグラジオラス』

花冠の王国の花嫌い姫3 騎士と掲げるグラジオラス (ビーズログ文庫)

今日の更新は、『花冠の王国の花嫌い姫3 騎士と掲げるグラジオラス』です。

 

あらすじ・概要

極寒の国ラハ・ラドマも夏季になり、再び花粉症に苦しむフローレンス。そんな中、大砂漠帝国が攻めてきたという知らせが届く。ふたりは侵攻を受けた騎士団領へ救援に行くことを決めた。フローレンスはそこで砦を奪還するための指揮を執ることに……。

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現代舞台の作品なのにあふれる昭和っぽさ―有栖川有栖『濱地健三郎の霊なる事件簿』

濱地健三郎の霊なる事件簿 (角川文庫)

今日の更新は、有栖川有栖『濱地健三郎の霊なる事件簿』です。

 

あらすじ・概要

超常的な事件を扱う霊能探偵・濱地健三郎。彼は助手のユリエとともに、奇妙な事件の依頼を受ける。自らの持つ霊感を使い、この世ならざるものが起こす事件を解決していくが……。

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