『紙の月』を読みました。
映画を先に見たので、映画との比較が多い感想になります。
あらすじ
銀行で契約社員として働く平凡な女性、梨花。彼女は光太という顧客の孫に出会ったことをきっかけに、顧客のお金を横領するようになります。しだいに罪悪感は薄れ、横領の桁が上がっていき、果たして彼女の行く末は……。
私は何者か
映画版とストーリーはほぼ一緒なのですが、描かれ方はがっつり違うなあと思いました。映画版の梨花は底が見えない謎めいた感じがするのですが、小説の梨花はごく普通の主婦という感じです。
それゆえに横領に手を出していく展開が恐ろしいです。誰でもこういうことをやってしまいそうだなという説得力があります。ところどころに脇役視点の幕間で、買い物依存、横領が誰にでも起こりうることが感じられます。
でもこの作品が暗い作品かと言うとそうではなく、なんだかよくわからない自己肯定感があるのも事実です。そこが一番面白いところですね。破滅の話ではあるけれど、オチは前向きなんです。横領した自分も平凡な自分も自分なのだ、という自己同一性というか……。
爽やかなような悲しいような読後感が面白かったです。
まとめ
映画とはだいぶ雰囲気が違いますが、これはこれで面白いです。
横領はだめぜったい!