ブックワームのひとりごと

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殺人犯たちはどのようにしてそこに至ったか 長谷川博一『殺人者はいかに誕生したか 「十大凶悪事件」を獄中対話で読み解く』感想

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『殺人者はいかに誕生したか』を読みました。

ずっと積んでてやっと読みましたが、読んでよかったです。

 書籍概要

臨床心理士である著者は、殺人犯が殺人に至るまでの経緯を研究しています。彼は、獄中で殺人犯たちに面会し、その心を理解しようと試みます。付属池田小事件、自殺サイト殺人事件など、ニュースを騒がせた凶悪犯との対話を記したノンフィクション。

社会福祉は人の為ならず

著者が繰り返し述べているのは、殺人犯たちは家庭になんらかの問題を抱えている場合が多いことです。

「この人は社会の力では救えないのでは」という人も出てくるんですが、誰かが手を差し伸べていたらもしかしたら誰も死なずに済んだのではないか、という事件もあります。特に五章の同居女性殺人遺体遺棄事件は、同居する子どもを守りたいあまりに犯行を企てていて悲しかったです。彼が子どもを連れてどこかに駆け込むことができさえすれば事件は起きなかったでしょう。

こうして見ると、家庭に恵まれない人に手を差し伸べるのは、ただ人道的な問題だけではなく、社会秩序のために有益なのだと感じます。情けは人の為ならず、とはこのことなのですね……。

一方で、ちょっと眉につばをつけて読まなければいけない部分もあると思います。著者はあまりにも親子関係に原因を求めすぎています。親による虐待の研究をしているから仕方ないんですが、事件を正確に知るには他の情報も集めて比較したほうがいいと感じました。子育てに悩んでいる人が読むと不安になりそうです。

ただ、「殺人犯の心を読み解く」という視点は一般の私たちにはなかなか持てないものなので、著者にはこれからもこの研究を続けてほしいと思います。そして文章にして後世に残してほしいです。

まとめ

読んでいてつらい本でしたが、知らないことをたくさん知れてためになりました。

難しい問題ですが、こういう研究は大事だと思うので、続けていってほしいです。

 

子どもを虐待する私を誰か止めて! (光文社知恵の森文庫)

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たすけて!私は子どもを虐待したくない―世代連鎖を断ち切る支援

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