一時期ピアノに関する小説を探してたんですけど、この作品を早く読めばよかったです。
『アーモンド入りチョコレートのワルツ』を読みました。
あらすじ
ピアノ教室に謎のフランス人がやってくる表題作ほか、夏休み別荘で遊ぶ子どもたちがピアノ曲を無理やり聞かせられる話、不眠症の少年少女がピアノの前でひっそりと出会う話の、ピアノ曲をテーマにした短編集。
ハッピーエンドでないのがいい
この作者の作品はDIVE!!やカラフル を読んだことがあり、面白いけどラストがご都合主義的ハッピーエンドなのが不満でした。この本は短編ということもあって、無理やりなハッピーエンドにはされてなかったのがよかったです。すべて丸く収まらないからこそ、余韻が楽しめます。
ピアノ曲の描写も「一度聞いてみたいな」と思うような書き方で、ピアノには詳しくないんですがわくわくしました。
各話感想
『子どもは眠る』
夏休み、親戚の子どもたちが別荘に集まって合宿を始めます。しかし途中から不協和音が……。
章くんみたいな子どもはいるよな~と思いつつ、章くんなりの優しさがあったのがよかったです。でもそれがわかったところで今年が最後の夏なのが物悲しいです。
曲はシューマンの「子どもの情景」
Shumann Kinderszenen Op.15 シューマン:子供の情景(13曲)kumiko-piano
『彼女のアリア』
学校で出会った不眠症の少年少女。しかし彼女の話にはおかしなところが出始め……。
展開する嘘が面白かったです。こういう嘘の部分が上手だとやっぱ小説家は嘘をつくのが仕事なのかな……と思ってしまいます。
最後は落ち着くところに落ち着いてよかったです。彼女らがこれからも仲良くやっていけるといいな。
ピアノ曲は「ゴルドベルグ変奏曲」
❝ゴルトベルク変奏曲、BWV988❞ ( 「アリア~第十五変奏曲)
『アーモンド入りチョコレートのワルツ』
ある日突然通っているピアノ教室にやってきたフランス人のおじさん。変わり者の彼は教室を変えていき……。
軋轢がなかったころには戻らないところがシビアですが、そこが逆にリアリティがあってよかったです。
困った人なんだけど、人間的魅力があるサティのおじさんのキャラクターがよかったです。
曲は「童話音楽のメニュー」より「アーモンド入りチョコレートのワルツ」
まとめ
文章も読みやすかったし面白かったです。やっぱりこの作者とは文章の相性がいいみたいです。
他に短編があったらまた読んでみたいです。