『不思議の扉 午後の教室』を読みました。
- 作者: 大森望,カスヤナガト
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/08/25
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 42回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
書籍概要
古今東西の本を読んできた編者が、「午後の教室」をテーマに選んだSF・ファンタジー短編アンソロジー。芥川龍之介、有川浩、ジョー・ヒルなどの作品を収録。
学校とSFと青春と
テーマが教室ということで登場人物も少年少女が多いです。この本のメインターゲットであるティーンの人にはとっつきやすいでしょうね。
大学・高校・あるいは昔の学校など舞台はさまざまで、作者による「学校」の違いを見るのも面白かったです。
各話感想
『インコ先生』湊かなえ
肩にいつもインコを乗せている保健室の先生。ある日彼女は心霊写真の相談を受けます。
湊かなえだからバッドエンドかと思いきやさわやかに終わってよかったです。かなり短い話ですけれど、ニヤッとできる作品。
『三時間目のまどか』古橋秀之
三時間目だけ窓に映る少女。彼女はどうやら過去の人間らしく……。
これは再読。読みやすく、等身大の少年の行動が共感できて好きです。オチも素晴らしい。
『迷走恋の裏路地』森見登美彦
恋した女性のために偶然の出会いを演出する大学生。彼は情報を求めて図書館警察を頼り……。
これ一作では内容がいまいちわからなかったです。本編を読んだらいろいろわかるんでしょうか。
『S理論』有川浩
都市伝説として扱われている「S理論」という研究。主人公はその秘密を知ってしまう。
ユーモアがあって面白かったです。特別な設定はないんですが、この皮肉めいたオチはまさにSFだなあと感じました。
『お召し』小松左京
ある男が発見された三千年前の文書を読むと、そこには驚きの内容が……。
この本で一番好きな作品。まず設定が面白いですし、文書を読んだ人たちの困惑も真に迫っていました。
もし外側の世界というものに気づいたら、彼らはどうなるのでしょうか。
『テロルの創世』平山夢明
主人公は学校で、自分たちはある人を守るために生まれてきたと伝えられる。その人とは……。
何も知らない少年が外の世界に出て、真実を知るというのが王道でよかったです。短編で終わらせるのがもったいない設定でした。
『ポップ・アート』ジョー・ヒル
主人公の友達は風船人間のアート。彼はいつも困難にまきこまれていました。
アメリカの学園小説って独特の趣があって好きですね。アメリカにはアメリカの生きづらさがあるんだなと感じます。
アートの結末は何とも悲しいものですが、この作品にはふさわしいと思います。
『保吉の手帖から』芥川龍之介
英語教師保吉が手帳に書いたメモ書き、という設定の超短編5つ。
文章が苦手なので内容を理解するのが難しかったです。でもなかなかひねたところのある作品です。素直じゃないなあと思うことしきり。
まとめ
今回は少年少女ということで、自分の学校時代と比較してみるのも面白かったです。
いいことばかりではなかったけれど、たまに思い出すのにはいいかもしれません。小説を通して。