小学生の頃の給食は何であんなにわくわくしたんでしょうね。
あらすじ
バレンタイン、給食のケーキをいじめっ子から奪うため、主人公の陰謀が始まる……。後ろ暗い子に届く謎の手紙、万引きグループが誰かを助ける話など、小学校を舞台にした連作短編。
プロットの面白さはピカイチ
何より話の流れが面白いです。複雑なプロットを立てているのにきちんと内容が理解できます。
そして決していい子ばかりではない小学生たちが、事件を乗り越えることで一歩前に踏み出していくところが心を打ちます。
若干文章に書きなれていないような拙さがあるけれど、それは将来的に解消されていくだろうし……と思ったら、作者この本しか出してなかったです。ぜひ次回作を出してもらいたい!
各話感想
『給食争奪戦』
正義感の鉄は、給食のチョコレートケーキをいじめっ子から奪おうとする。その作戦とは……。
さまざまな人の思惑が交差して一つのオチを作っていくところが面白いです。給食という誰もが経験したことをこんなに魅力的に書いてのけるのが新鮮でした。
『消しゴムバトル』
消しゴムを盗むのが趣味な暗い少年が、謎の手紙を受け取る。一体差出人は誰なのか。
いじめに立ち向かう、というテーマは普遍的だけれど、いきなり盗癖から入るのがこの作品のすごいところです。しかも消しゴムを盗むということがそのあとも伏線として生きてくるんですよね……。
『万引き競争』
競い合って万引きをしている万引きグループ。彼らには万引きを始めた事情がありました。
児童文学として成り立ちそうな『給食争奪戦』ですが、万引きをここまできっちり書くと怒られそうです。
でもそういう悪いことをしたということを自覚して、償おうとする過程が説教臭くなりすぎずに書かれているのがよかったです。
『転校少女』
丸岡のクラスに転校してきたアキ。彼女は家庭の事情をかかえていて……。
不幸な立場の少女をかわいそうと言わずに、できるだけ対等な立場で助け舟を出そうという姿勢は優しいなあと思います。
そしてあの人の秘密が明かされるわけです。もう大人になってしまったから、彼の後悔の方が共感してしまうところがありますね。
『学園祭を台無しにしたのは誰だ』
高校生になった主人公たちが学園祭の準備をします。しかし出し物が何者かによって汚されてしまい……。
ミステリ風の趣がある一作。後日譚的な立ち位置もあり。
とらえどころのないヤッチがこんなことを考えていたのか、とちょっと感動しました。こういう考え方の違いがわかるのは、群像劇の面白さですね。
まとめ
すごく面白かったので、なんとか次回作を出してほしいですね。この人なら児童文学レーベルでもやっていけそうですし……角川つばさ文庫とか。
アンケート出そうかな……。
現代日本にやってきたセガの女神にありがちなこと<現代日本にやってきたセガの女神にありがちなこと> (電撃文庫)
- 作者: 師走トオル
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2016/12/01
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る