ブックワームのひとりごと

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突撃となりの宗教教育 藤原聖子『世界の教科書でよむ<宗教>』感想

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ちくまプリマー新書は中高生向けの新書レーベルなのですが、なかなか侮れないです。

世界の教科書でよむ〈宗教〉 (ちくまプリマー新書)

 

書籍概要

高校の倫理教科書の編集に携わっている著者が、各国の宗教教育の教科書を集め、比較します。その国で「宗教」とはどのように学ばれているかを通して、日本における宗教教育の問題点も見えてきます。

 

間違いはあるのに答えはない

登場する国は基本的に政教分離であり、国教は公式にはありません。しかし、明らかに特定の宗教に集中していたり、あるいは教会が直接学校に指導に言っていたり、完全に公平というわけではありません。

ただ、共通しているのは、世界同時多発テロ移民問題などで宗教間の偏見が増大される中、「どのように子供たちに宗教における寛容を教えるか」について各国が悩んでいるところです。

こうしてみると教科書作りというのは、間違いはあるのに答えはない難しい過程なのだなあと感じます。

教科書ってつまらないんですが、「未来を担う子どもたちにはこう教えよう」という大人たちの決意でもあるので、もろに国ごとの考え方が出ちゃうのでしょう。

 

日本の宗教教育の問題点

日本では宗教系の私立学校以外は宗教の時間はありません。それはそれでいいと思うのですが、著者が指摘しているのは日本における宗教への無関心さです。

無節操なのは日本人のいいところでもあり悪いところでもあります。宗教への無関心さが相互理解を妨げることもあるのです。

たまに「日本人は寛容だ」という人がいますが歴史を見ると全然そんなことはないです。宗派ごとにけんかしていた歴史もあるし、比較的最近だと明治政府による廃仏毀釈なんかもありますね。そして宗教にかかわらず、今でも外国人への差別はひどい。

その辺を無視して「寛容」と言ってしまうところが日本人の無神経なところなんでしょうね。著者が指摘してくれてよかったです。

 

まとめ

結論として書いてあることは結構あたりまえのことなんですが、「宗教の教科書」という題材をもとにすると新鮮です。

世の中にはいろんな国があり、宗教があり、教科書もある。当然なんですけれど、たまに確認しないと忘れるんですよね。こういうこと。

 

世界の教科書でよむ〈宗教〉 (ちくまプリマー新書)

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教科書の中の宗教――この奇妙な実態 (岩波新書)

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