職場の人におすすめされて読んだ一冊。
表紙がちょっときらきらしてて、遊び紙がトレーシングペーパーで凝った装丁だし、本文も章の頭に装飾が入ってます。気合が入ったデザインです。さすが決定版。
あらすじ
政略結婚を拒んで、宇宙船に飛び乗った少女、あゆみ。なりゆきで同室になった男性二人組は、驚くべき事情を抱えていました。あゆみは彼らと問題解決のために協力することに。
ゆるい冒険スペースファンタジー
昔のSFなので、今となっては否定されてしまった科学技術が出てくるんですが、これはこれで新鮮味があって面白いです。レトロフューチャーというやつか。
主人公の口調がゆるく、ここで読みにくく感じる人もいそうです。新井素子はだいたいそうですが、好き嫌いが分かれる文体です。
それでいて内容はゆるくはなく、人間の弱さや本質に触れる内容なのが面白いです。そこが長く評価される原因なんでしょうね。
各話感想
『星へ行く船』
あゆみが宇宙に飛び出す。冒険の始まり。
この女の子考えなしだなー!と思っていたら実際にひどい目にあって結構シビアだなと思いました。文体がゆるいからあまり切実さがないけれど。
冒険の始まりにわくわくしました。
『雨の降る星 遠い夢』
あゆみが謎の植物を追うミステリ風味の話。
きりん草の切実な叫びと、人間の弱さに悲しくなってきます。でも主人公の前向きさに救われますね。
きりん草ももっと気合入れて生きて行ってほしいです。
『水沢良行の決断』
太一郎があゆみについてつらつらと語る。新装版のための書きおろし。
ぐだぐだと話しているかと思いきや火星の意外な設定が明かされたり、猫を拾うというそれだけの行為の謎解きがあったりして面白かったです。ほぼ会話劇でここまで書けるのはすごいです。
まとめ
ゆるい感じでありながら人間の業を描くというところが面白かったです。続刊も少しずつ読んでいきたいですね。
さすがはライトノベルの源流の一つと呼ばれるだけはあります。