ブックワームのひとりごと

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存在感のない少年は革命を目指す 松村涼哉『ただ、それだけでよかったんです』感想

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ずいぶん前に買ったけれど長い間積んでいました。

なんだか「読む」スイッチが入らないとなかなか読まないこともありますね。

ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)

あらすじ

クラスの人気者、昌也が自殺した。彼を自殺に追い込んだのは「僕」。そして弟の死の真実を追う姉は、主人公の行動に疑問を持ちます。彼はどのようにして親友を殺したのか……。二つの視点から描かれる青春サスペンス。

 

予測できない展開にハラハラ

この作品は、何より話の展開が面白かったです。ミスリードに次ぐミスリード、二転三転する主張、誰がどのようにして昌也を死に追いやったのか、なかなか読めない秀逸なストーリーでした。デビュー作とは思えない、話をぐいぐい引っ張っていく力を感じます。

最後のオチもびっくりしました。あの人は何かしらあると思っていたけれどこういう形とは。

ストーリーはサスペンスらしいサスペンスで、その中に青春のままならなさというテーマを描いているのがよかったです。本当に読んでいる間はハラハラしっぱなしで、読み終わって疲れました。

 

高度なコミュニケーションの中でさまよう少年少女

そして、高度すぎるコミュニケーションの中で生きづらさを抱える主人公の姿がつらかったです。自分をクズと自称しながら、幸せをあきらめられない愚かさが悲しくてたまりません。幸せになってほしかったけれど、こういう性格だから幸せになれなかったんだろうなあ。

ここまではらはらする話を書いて、オチが「助けを求めることの大切さ」というものに着地してしまうのは、それはそれで業が深い気がします。でも、これが一番なんですよね。

しかし、主人公は暗くてモテないという設定なのにイラストが全然そんな感じじゃないのは不満です。こんな美少年なら黙っててもそれなりにモテるのでは……?

 

まとめ

デビュー作ということで荒いところもあるんですが、個性としっかりしたストーリー展開があって、評判がいいのもうなずける作品でした。

他の作品も出ているので、機会があったらチェックしてみようと思います。