ブックワームのひとりごと

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いびつな主従関係の果てに見た境地 谷崎潤一郎『春琴抄』感想

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春琴抄 (新潮文庫)

あらすじは知っていましたが、改めて原文を読んでみるとイメージと違いました。

やっぱり実際に読んでみないとわからないですね。

 

あらすじ

幼くして盲目になり、高慢に育った春琴。彼女は音曲の道に進み、丁稚の佐助を弟子にします。佐助といびつな主従関係を作り出す春琴。しかし彼女は顔に大きなやけどを負い……。

 

実際の主導権を持っているのは佐助

この作品の怖いところは、実際に主導権を握っているのは佐助ということです。春琴は佐助がいないと生きていけないでしょう。それなのに主人はあくまで春琴というところが歪んでいる……。

途中から、佐助は「理想の主人」を固くイメージし、春琴はそれに従うしかなかったのではないかと思えてきます。最初は本当に驕慢な女性だったのでしょう。しかし力関係が逆転してしまったからこそ、春琴は主従というゲームから降りられなくなってしまったのではと感じました。

歪んだ恋愛とも執念ともつかない関係性は、なるほど長く読み継がれているだけある美しいドロドロでした。

 

文章はすごーく読みづらい

しかし、やっぱり文章はめちゃくちゃ読みづらいです。句読点の打ち方が現代とはまったく違います。ひとつの文章がやたらと長くて、どこで休止していいものかわかりません。息継ぎのない歌を歌っているようです。

後半になってくるとだいぶ慣れてきました。けれど、いくら読んでも頭に内容が入ってこない人もいると思います。薄い本だったのが救い。この薄さじゃないと挫折していたかもしれません。

ただ読みにくいけど文章は上手いです。ねっとりした情念のようなものが文章から漂っていました。だからついページをめくってしまうんですよね。

その読みづらさゆえにおすすめはしにくいです。私は関係性に萌えられたので楽しかったですけれど。

 

まとめ

読みづらかったけれど面白かったです。やっぱりあらすじだけ読んで知ったかかぶりしちゃだめですね。

変態性も文章に昇華してしまえば文学なんですね……。

 

春琴抄 (新潮文庫)

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