ブックワームのひとりごと

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コバルト文庫の歴史から少女小説の立ち位置を考える 嵯峨景子 『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』感想

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コバルト文庫で辿る少女小説変遷史

TwitterのRTで回ってきて、「これ絶対好きだ!」と思いました。読んでみたらやっぱり好きだった。

 

書籍概要

少女小説の代名詞とも言うべきレーベル、コバルト文庫。本書ではコバルトの歴史をたどりながら、少女小説における表現の変遷を考えます。最近では刊行数も少なくなってきた少女小説は、どこに「少女小説の遺伝子」を残していけるのでしょうか。

 

コバルト文庫の歴史から見る「少女小説」の概念の変化

少女小説」と一言で言っても、時代によって少女小説に求められているものは全く違います。

活字を知らない少女たちのための「入門書」として、ファンタジーなどの異世界を味わえる「非現実に浸る本」として、いじめや学級崩壊などを扱う「現実の学校生活の痛みを表現する小説」として。「少女のため」というコンセプトは変わっていませんが、そこに込められた意味は多種多様です。

ブームはころころ変わります。しかし時代によって役割を変えていくことで、生き残れた部分もあるということがわかりました。

少女小説と少年向けライトノベルとの関係性についても説明されているので、そのあたりは男性にも面白いんじゃないかと思います。

 

少女のためのものから少女の心を持つ大人のためのものへ

意外だったのは、少女小説を好む読者の年齢層が高くなっていること。そしてそれに伴い、ハッピーエンド前提のもの、大波乱の少ないものが好まれるようになったことです。

お姫様が結婚するストーリーである「姫嫁」が好きなのはなんとなく低年齢層のイメージがあったので意外でした。私が波乱万丈なほうが好きなだけでした。

「姫嫁」が嫌いなわけではないけれど、多様な表現が存在しないと、ジャンルとしてどん詰まりになると思うので、新しいジャンルやテーマも発掘してほしいです。なかなか商業的には難しいのかもしれませんが。

少女小説レーベルもそれは重々承知で、そのためにライト文芸レーベルを作ったり、TLに手を出したり、「(大人も含め)少女の心を持つ人々のための作品」を模索しているんだろうなと思いました。

 

まとめ

少女小説をテーマにした研究所は珍しく、知らないことばかりで知的好奇心が満たされました。まだまだ議論の余地がある部分もあると思うので、これをきっかけにみんなが少女小説について語ってくれるといいですね。

 

コバルト文庫で辿る少女小説変遷史

コバルト文庫で辿る少女小説変遷史

 
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