ブックワームのひとりごと

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ホータロー、走りながら推理する 米澤穂信『ふたりの距離の概算』感想

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ふたりの距離の概算 (角川文庫)

久しぶりの古典部シリーズです。ちんたら読んでいるけれど、間をおいても結構設定を覚えているからありがたいです。

楽天koboで買ったもの。

 

あらすじ

新年度になり、新入生の勧誘をしなければならなくなった古典部の面々。新入生が一人入ってくるが、マラソン大会の前日にやめてしまう。奉太郎は負い目を感じている千反田のために、彼女がなぜやめたのか、推理しようとする。

 

 

走りながら推理する

今回は構成が面白かったです。

今回は大きな枠としてマラソン大会があり、奉太郎が回想の中で謎解きをする構成になっています。その個々のパートの中で、全体のオチに対する伏線が張ってある形式。

走りながら推理することによって、奉太郎の焦りみたいなものが強調されてはらはらします。ただ走るだけではなく、走るコースを使って展開を作っていくのも楽しいです。

マラソンは大嫌いなので、奉太郎の境遇に同情しながら読みました。

刑事事件が扱われなかった古典部シリーズですが、今回はなかなか罪が深い謎解きになりました。直接扱っているわけではないけれど、それで運命を狂わされた人間がいるわけですね。

 

奉太郎の変化

いつもやる気がなくてゆるゆるな奉太郎が、自分からえるの誤解を解こうとするなんて……成長を感じます。しかも走って。

奉太郎はかなりむかつく主人公なんですけど(その斜に構えたところも好きですが)こうして成長してくれると読んだかいがあったなと思います。

えるや古典部と出会うことによって、彼も大切なものを見つけたんだなあと感じました。相変わらずやる気はないけど。

誤解は解けたけれどすべてが元通りになるわけではないのが、この作品らしいなと思います。結局謎解きは表面的なもので、人間の中身を救うことはできないんですね。

苦いけれど、誤解を解くことで少しだけ救われたかもしれない。そういうところが好きなんですよね。

 

まとめ

久しぶりに続きを読みましたが面白かったです。

この冷めた感じが好きなんですよね。また読みたいです。